中沢新一 ©文藝春秋

『ブラタモリ』が始まった時、「(たぶん)惰性でやってる『いいとも』ではなく、自分のやりたい番組ができてよかったね!」と思い、番組は実際面白かったが、しばらくたつと「歩きながら、ミュージックステーションでAKBの歌聞いてる時のようなどんよりした目になっている」と感じられてきた。今、タモリがイキイキしてる回に当たるの3割ぐらいでは。年輩の旅はやはり疲れるんじゃないのかなあ。ネタも尽きるし。

 さてそのブラタモリがあった日の昼前、関西テレビで「カンテレ開局60周年特別番組」と銘打って『大阪アースダイバー』が放映された。

 中沢新一の『大阪アースダイバー』という、「大阪街歩き」みたいな……といっても中沢新一なので古地図だの古代史だの民間信仰だのがからみあった「あの場所にはこんなに意外な由縁が!」みたいな本をもとにした番組。

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 ケンドーコバヤシに筧美和子に麒麟。そこに中沢新一本人も加わって大阪を歩き回る。通天閣や黒門市場とか。

 コンセプトはまさに『ブラタモリ』。なんでもない道路歩いて、ちょっとしたズレや高低や、地表の痕跡とかを見つけ、ここにはこんな意味があるんですよ、と教えてくれる物知りが登場、「ほおー」とみんなが感心する。

 番組ラスト、天下茶屋(地名)の坂の上から大阪湾まで伸びる一本道を遥かに見下ろす。昔ここは海だった、っていうそのネタの景色の、輝くような感じから何もかもほんとに『ブラタモリ』見ているようだった。『ブラタモリ』も「昔は海(沼、湿地)でした」ネタ好きだし。

 ただ、見ていても別に「パクりやがって!」と感じない。むしろ「こっちがホントなんではないか」とすら思った。出演者たちがユルめ(ここ重要)に元気で、こういう街歩き番組として健康な感じがするのである。そんな中、物知りとタモリの役を一手に引き受けてたのが中沢新一であるが、コジャレた格好しながらもそれほど持ち上げられず、いいおっさんの味出してた。『大阪アースダイバー』のほうが、ネタの方向にちょっとオカルトの香りがあって好みだというのもあるのだけど。

 でも、この番組が帯番組になってネタを探しながら続けていったら、中沢新一も出演者たちも疲弊してブラタモリ化していくかもしれない。私はこれ面白かったから帯番組になってほしいけど、それ考えたら一回の特番でいいのか。

▼『大阪アースダイバー~ケンコバ的 歴史発掘手帖~』
関西テレビ 5月26日(土)
https://www.ktv.jp/earthdiver/