熊野寮は、「1965年4月13日に設立された京都大学の学生自治寮です」と、ウェブサイトに書かれている。

大学のウェブサイトには、寄宿料(家賃)は月額700円、光熱費は1500円から2500円と書かれており、熊野寮が作った動画では、「維持費月額4300円で住める」と紹介されている。

「アパマンショップ」のサイトによると、熊野寮のある京都市左京区のワンルーム家賃相場は4万6000円である。熊野寮には個室がなく、2人部屋か4人部屋であるとはいえ、それでも、相場の10分の1という破格の安さではないか。

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破格の家賃や、運営の面は「特殊」ではない

日本学生支援機構の調査では、国立大学の96.5%が学生寮(寄宿舎)をもっており、その半数にあたる50.6%が、「0~5000円」と、熊野寮と同程度の寮費である。熊野寮のような「学生による自治」で運営されているものも、50.6%と半数ほどである。

数字を見る限り、熊野寮は、家賃の面でも、運営の面でも、特殊ではなく、2つにひとつの国立大学には似たような施設があると言えよう。

では、なぜ、熊野寮をめぐるニュースが、注目を集めるのか。

それは、京都大学が、ウェブサイトに「熊野寮の一部は、中核派系全学連の関係先のひとつとされ、警察による強制捜査(直近では令和6年6月25日)が行われたことがあります」と「特記事項」に記す、その性格にある。

学生寮としては、ありふれているはずなのに、「強制捜査」が入ったり、さらには、関係者が逮捕されたりする点で、珍しいからである。

テレビ番組では「天才児の巣窟」として紹介

家宅捜索の直前、2月3日の夜、朝日放送(ABC)のテレビ番組「なるみ・岡村の過ぎるTV」で、熊野寮が特集された。

〈京大生400人が共同生活⁉ 「知のアジト謎深過ぎる京都大学熊野寮」〉と題された40分ほどの特集で、熊野寮は「天才児の巣窟」と称され、「寮生の3分の1が留年してしまうらしい」などと、密着取材の成果が放送された。