オーバードーズが増えていることを示すさまざまなデータがある。
国立精神・神経医療研究センターの薬物依存研究部では、薬物乱用に関するさまざまな調査研究を行っている。有床精神科医療施設を対象にした調査(全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査)では、1987年からほぼ隔年で、薬物関連で通院や入院をした患者について調べている。
2022年の9〜10月に通院・入院した患者を対象にした直近の調査では、全国の有床精神科医療施設の1143施設が回答、2468症例を分析対象とした。長期間断薬しているものの通院している人なども含めると、主に使用している薬物は「覚醒剤」が49.7%で最多、ついで「睡眠薬・抗不安薬」が17.6%、「市販薬」が11.1%だった。
薬物使用調査から見える市販薬の伸び率
一方、「1年以内に薬物を使った」という1036症例にしぼると、「覚醒剤」は28.2%で、「睡眠薬・抗不安薬」が28.7%、「市販薬」が20%と、市販薬の割合が高くなる。過去の調査と比較すると変化が明らかだ。
2014年の「1年以内に薬物を使った」症例をみると、脱法ハーブなどの「危険ドラッグ」が最多の34.7%、ついで「覚醒剤」が27.5%、「睡眠薬・抗不安薬」が16.9%だ。
危険ドラッグは所持や使用が法律で禁止されていなかったため、急速に乱用が拡大し、使用者が車の運転で死亡事故を引き起こすなど社会問題となった。医薬品医療機器法が改正され、14年から所持や使用などが禁止された。その後に行われた16年の調査では、「危険ドラッグ」の割合は2.5%と激減した。そしてこの年、14年には3.8%だった「市販薬」の割合は8.2%と倍以上に増えた。その後も市販薬の割合は増え続けている。
オーバードーズで頻用されている成分
年代別に比較すると、若年層での使用が顕著だ。22年の1036例のうち、30代以上の年代では、いずれも「覚醒剤」か「睡眠薬・抗不安薬」が最多の割合なのに対し、20代では「市販薬」が35.3%と最多、10代では68.4%が「市販薬」で、「覚醒剤」や「大麻」はいずれも10%に満たなかった。