では、どのような成分が乱用に使われているのか。
2022年の調査によれば、市販薬を主に使う薬物とする症例の薬の内訳(複数選択)のうち、「コデイン含有群」が男性76.5%、女性71.6%となり男女ともに最も高かった。コデインは脳の延髄にある咳中枢に作用する成分で、せき止め薬や総合感冒薬などに使われている。
たとえば市販薬のオーバードーズで以前から頻用されているせき止め薬には、有効成分として「ジヒドロコデイン」が含まれている。せき止め薬や風邪薬には他にも「メチルエフェドリン」という成分が入っている。「ジヒドロコデイン」「メチルエフェドリン」はそれぞれ、麻薬及び向精神薬取締法、覚醒剤取締法の規制対象となっている成分だが、低濃度ならば市販薬に含有されても問題はない。
乱用防止策の現状
市販薬のなかでこうした成分を含有する製品が乱用されてきたのは、以前から続く傾向だ。国はこうした現状を受け、「濫用等のおそれのある医薬品」として、2014年から6成分を指定。含有する製品については販売規制を始めた。
具体的には、エフェドリン、コデイン(鎮咳去痰(ちんがいきょたん)薬に限る)、ジヒドロコデイン(鎮咳去痰薬に限る)、ブロモバレリル尿素、プソイドエフェドリン、メチルエフェドリン(鎮咳去痰薬のうち、内用液剤に限る)だ。
該当する医薬品については、原則1人1個までの販売とし、複数の購入希望があった場合には理由・使用状況などを確認すること、中学生や高校生などの若年者が購入する場合は名前や年齢、使用状況を確認することなどが求められてきた。
規制対象だけで1500製品
国の調査では、こうした医薬品を複数個購入しようとしている購入者がいたときに適正に販売できている薬局は、規制が始まった14年には53%にとどまった。同年から市販薬の販売が解禁されたインターネットでは、54%だった。23年には薬局で78%、インターネットで82%まで上がった。