アジアン そうですね。去年くらいに、タイを旅していて泣いちゃったこともありました。宿の近くにあった「シーク教」という宗教の寺院で朝食のカレーを無料で振る舞っていたので、初めてそこに行ってご飯を食べたんです。そのとき手持ちの現金がほとんどなくて、本当にお腹が減っていたので。

 そしたらシーク教の施設の方が「初めてか?」と声をかけてくださって。「初めてです! 美味しいです!」と返事したら「明日も来いよ」と言ってくださったんです。そのとき、旅の孤独感と空腹感で参っていたのもあって、うれしくて思わず感情的になってしまいました。あのときほどの感動はないですね。

タイで人の温かさを感じているそうだ(写真=本人提供)

「自分の心に忠実に従って行動している」車中泊や旅を通して変化した価値観

――車中泊や国内外での旅を通して、価値観などに変化はありましたか?

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アジアン 「幸せ」の定義が変わりましたね。これまでは「お金があるかどうか」で幸せを判断していたけど、今は「自分が幸せに思うかどうか」を大事にしています。今の僕は、誰かの歩いた道をなぞっているわけではないので、自分で全部決めて、自分の心に忠実に従って行動している。それに幸せを感じますね。

 たまにYouTubeの視聴者さんから「幸せですか?」と聞かれたりするんですけど、自分の思うように生きているので、「不幸せ」とは答えないで「幸せです」と答えてますね。

将来に対する不安感はあるけど、今は絶望感がない

――今のアジアンさんは、会社を辞めるときに思い描いた理想の生活に近づけていますか。

アジアン そういうわけでもないんですけど、少なくとも毎日楽しくは生きています。旅をするなかで、楽しく暮らすための“コツ”みたいなものを掴んだので。

 40歳を超えてから自分の未来が見えて、しかもその未来が幸せそうではなかったから会社を辞めて。一旦レールから外れたんですけど、僕はそれでいいかなと思っています。将来に対する不安感はあったとしても、今は絶望感がない。サラリーマンをやっているときは、絶望を感じていたので。

 もし今後、自分の生活が「不幸せ」だと思うようになったら、また元のレールに戻ればいいだけの話なので。だから今は、多少やせ我慢しながら楽しく暮らして、その先に理想の生活があればいいなと思っています。

ビールを飲んで幸せをかみしめるアジアンさん(写真=本人提供)