――その辺の浅野さんの感覚は、こだわりがなくて柔軟ですよね。

浅野 よく言えば柔軟だし、言い方を変えればただのミーハーなんです(笑)。

――でもすごく頑固なところもあるじゃないですか。ここだけは譲れないという区切りは、どこにあるんですか?

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浅野 面白くなきゃ嫌だ、というところですね。面白くないと嫌だ、カッコよくなければ嫌だというところは頑固かもしれません。だから高校生が好きな恋愛ものでも、本当に面白ければ出たいですよ。僕が面白いと感じるようなことをやらせてくれるなら。

「変わらずにいるためには、変わり続けるしかない」

――00年代の半ば以降、山田洋次監督の『母べえ』(2008)などにも出演するようになりましたが、新しい発見はありましたか?

浅野 たくさんありました。いろいろなことを教えてもらって、それまで苦手にしてきたことと向き合って、得るものばかりでしたね。山田洋次監督はしきりに「浅野くん、もっと活舌よく、発声をしっかりして」と言うんですけど、それは10代のころの自分が絶対にやりたくなかったことですから。でもそれを自分から進んでやりたかったし、教えてもらうものをちゃんと吸収したかったんです。

©Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, Katsize Films, The Y House Films

――あらためて振りかえると、その時期を経なければ、『SHOGUN 将軍』や『レイブンズ』で見せた奥行きの深い演技にたどり着けなかったかもしれません。

浅野 そう思います。あのころは「そんな映画に出るな」と突っかかってくる人もいたんです。90年代のようなアートフィルムに出るべきだ、お前はそっち側の人間じゃないかって。でもそういう映画は、ほとんど誰も撮れない時代になっていました。だから突っかかってきた人には言ったんです。「あんたが俺のためにお金を稼いでくれるわけじゃないだろう? 簡単にそういうことを言うな」って。

――でもすでに確立したスタイルを大きく転換するのは、怖いことでもあったはずですよね?

浅野 変わらずにいることで、自分が必要とされなくなるのがいちばん嫌だったんです。ミーハー根性があるから、時代に乗り遅れるのが本当に嫌なんですよ。「変わらずにいるためには、変わり続けるしかない」という名言がありますけど、たしかにその通りだったなって、いまは実感しています。

撮影 橋本篤/文藝春秋

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