父が建てた建築費13億円の豪邸を売却しなかったワケ

――建築費13億円の逸見邸の売却などは一切考えなかったのでしょうか?

逸見 母は「とにかく残したい」という思いが強かったようです。それを直接、面と向かって言われたことはないんですけど、妹とはそういう話をしていたようです。現在は妹が母の思いを継いでいるところがありますね。

 一方で、僕はそこまで「何が何でも残したい」っていう気持ちはないんです。「親父が建てたと言えば建てたけど、借金を返したのは母だしな」みたいな。それに維持費の問題もありますし。

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妹・愛さんと母・晴恵さん、太郎さんのスリーショット(写真=逸見太郎さん提供)

――131坪、3階建て、7LDKの大きさと広さですから、維持費もそれなりになりますよね。

逸見 『5時に夢中!』で、よくネタにされてましたけど、あれは番組的に盛りに盛ってる話なんです。固定資産税とか「そんなわけないだろ!」っていう金額が出されてましたけど(笑)。建てて間もない頃は固定資産税もそりゃあすごかったでしょうけど、建ててから30年以上経ってますから下がってますし。

 ただ、必要ないものもあって、そのせいで電気代が余計にかかることもあります。以前は業務用の大きなエアコンや、冷蔵庫だったり「さすがにいらないでしょ。なんだよ、これ」っていうのがいっぱいあったんですよ。そんな設備を普通に使ってたらコストは掛かるし、スペースもとりますから。

現在は2世帯住宅にして、妹も一緒に暮らしている

――レンガを海外から取り寄せて建てたような家ですから、修繕も大変そうですけど。

逸見 そうなんですよ。家に使われている建材がいいものだったり、建具も凝っていたりするので、それが問題というか悩みのタネなんですよ。何かしら家のパーツがダメになって、量産型の商品に替えてみると、やっぱり合わないというか、チグハグになっちゃうんですよね。替えたところだけ、浮いて見えちゃう。

 まぁ、僕は「それでもいいかな」って思うんですけど、妹含め家族会議でこれはダメだね、となっちゃう。

――妹さんも一緒に暮らしている?

逸見 ずっと暮らしています。2013年に僕が結婚をして、2世帯住宅にしたんです。祖父母がいない分、息子にとっては数少ない身内が近くにいて一緒に遊んでくれるのはありがたいですね。父と母にも会わせたかったなと思います。

田園調布の家に住んでいた頃の逸見家(写真=逸見太郎さん提供)

「まさか、母まで」ローン返済に奔走していた母のがん発覚

――ローンに関しては、お父さんの生命保険と貯金で7億円を返済して、残りはお母さんが払っていったそうですね。

逸見 母は本当に頑張ってましたね。講演活動で、全国各地を飛び回っていました。執筆の仕事も熱心で、とにかく、忙しく動き回りながら、父の車などを売ったりもして家計を支えていました。

 僕自身も、そんな母のことを心配していたのですが、母は「子どもたちには心配させたくない」と思っていたようです。感謝の気持ちとともに、母の強さに驚かされたことを覚えています。

――お母さんは、1994年6月に子宮頸がんが発見されました。ステージ0だったとのことですが、お父さんが亡くなって半年後のがん発見は、さすがにこたえたのでは。

逸見 まあ、ショックでしたよね。「まさか、母まで」っていう。当の本人はとても気丈といいますか、「何が何でもローンを返済しなきゃ」という気持ちをモチベーションに精一杯、頑張っていたようです。ただ、その姿を見ていると、やっぱり心配になる部分もありました。「カラダ大丈夫かな」と思う一方で、母の強さを信じる気持ちもありました。

 そんな母が一心不乱に頑張っている姿を見ていると、自分としても何かできることをもっと考えなくては、と感じることも多かったです。