なぜ、このような相違が生じたのか。
もしかしたら、小池氏は「Aを紛失したため、再度、カイロ大学から入手した」と答えるかもしれない。しかし、それならなぜ、文字は写したように同一なのか。「一枚一枚が手書き」であるのならば、あり得ないことだ。
卒業証明書にも、いくつもの疑問が
次に卒業証明書に関する疑問点を述べたい。
卒業証明書とは、卒業が決定した学生に即座に発行されるものである。学生はこれを用いて就職活動を行う。一般的に、学生が卒業証書として利用しているのは、この写真入りで印紙が貼られている卒業証明書である。希望者のみが卒業証書を有料で大学から手に入れる。
小池氏はやはり上記「とくダネ!」で、「卒業証書」とともに「卒業証明書」を公開した。
だが、この「卒業証明書」にも、いくつもの疑問を感じる。
小池氏より3年早く、1973年9月にカイロ大学文学部を卒業した小笠原良治大東文化大学名誉教授のそれと比較してみれば、違いがよくわかる。
まず、左上にある本人写真と本紙の間には、割り印としてスタンプが押されている。だが、小池氏のものは円形ではなく、楕円で、写真の部分と紙の部分にずれが生じているように見える。その右側には、やはり印紙と本紙の間に割り印としてスタンプが押されなければならないが、小池氏のものは、あまりにも薄い。
下部に、ふたつ押されているスタンプのうち右側のものは、二度押したように不鮮明である。左側も、どのようなデザインのスタンプかまったく読み取ることができない。
小笠原氏のものは、ご覧のように鷲が両翼を広げているデザインがはっきりとしている。
また、紙のサイズにも明らかな違いがある。小池氏の「卒業証明書」はなじみのあるA4用紙などに近い縦横比だが、小笠原氏のものは正方形に近い独自の寸法になっている。
情報の透明化を謳ったのではなかったか
ただ、私は小池氏の「卒業証書」も、「卒業証明書」も現物を見ていない。
「文藝春秋」7月号の記事を書くにあたり小池氏に質問表とともに、「卒業証書」「卒業証明書」のコピーを提示してくれるように求めたが、顧問弁護士からの回答書にて無視されたからだ。
選挙の際に、小池氏は自らこれらをテレビ番組で公開した。
なぜ、正確な検証を望む私たちの要望には応えないのか。
知事になるにあたって、情報の透明化を謳ったのではなかったか。
約束を自ら果たして欲しい。
◇ ◇ ◇
小池都知事のカイロ時代の姿と「カイロ大学首席卒業」の謎を解き明かした、全26ページにわたる石井氏執筆の「小池百合子『虚飾の履歴書』」は、現在発売中の「文藝春秋」7月号に掲載されている。