女子高生が書いた手紙に

新天皇・雅子皇后「65人の証言」

釣巻 洋子 元OECD東北スクール生徒
ニュース 皇室
陛下はお酒、雅子さまは生き物が大好き。ご出産秘話から御所の中の私生活まで……新天皇・皇后おふたりに接した人々が素顔を明かす。
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「妃殿下(当時)にお手紙を書いてみませんか」

 外務省関係者の方から、そんなご提案をいただいたのは2012年のことでした。当時、私は17歳。東日本大震災の復興を目的とした教育プロジェクト「OECD東北スクール」の生徒として活動していました。被災地出身の、1人の高校生に過ぎなかった私の書いた手紙が本当にお手元に渡り、それがきっかけで、天皇皇后両陛下に我々の活動の発表会にご臨席頂くことになるとは、夢にも思いませんでした。

「OECD東北スクール」は、震災後、経済協力開発機構(OECD)と文部科学省、福島大学、各自治体などの協議によって設立された教育プログラムで、被災地の中高生約100人がパリでの復興イベント開催を企画していました。

 皇后陛下へのお手紙は、何日もパソコンと向き合いながら必死で考えました。辛い経験をいかに乗り越え、グローバルな人材として世界に羽ばたこうと志を持って活動しているか……などを書き綴りました。

 手紙がどのような経緯で皇后陛下のお手元に上がったのかは分かりません。手紙を書いたことさえ忘れかけていたころ、天皇皇后両陛下が発表会に来てくださることを知りました。あまりに驚いて、にわかには信じられませんでした。

 発表会当日、私は出迎えと案内役を務めました。皇后陛下はお会いした瞬間に、「お手紙ありがとうございました」とおっしゃってくださり、私は喜びで舞い上がってしまいました。とても緊張しましたが、両陛下の笑顔を見ているうちに、だんだん落ち着きを取り戻してお二人の目を見てお話しできるようになりました。天皇陛下に「将来は生物学を学びたいです」と申し上げると、「フランスは研究が盛んなので留学も良いですね」とのお言葉を頂戴しました。

 今春、私は同志社大学を卒業し、来春から夢だった医療関係の道に進みます。皇后陛下にお手紙を出してから、叶えたいと思うことがあったら、まずは「最初の一歩」を踏み出すことが大事なのだということを学びました。

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source : 文藝春秋 2019年11月号

genre : ニュース 皇室