小島秀夫 家にパソコンを置かない

小島 秀夫 ゲームクリエイター
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 僕にとっての“物創り”は麻薬のようなもの。家に機材があると、帰宅後や週末にどうしても仕事をしてしまう。そのため、家にはあえてパソコンをずっと置かないようにしていました。エッセイ連載などの原稿のために、わざわざ週末に出社して、会社で原稿を書いていたこともあります。コロナ禍を経て、緊急時を想定して、家にパソコンを置くようになりましたが、リモートの会議など、業務に関係するやり取りは、なるべく自宅では行わないようにしています。

 電話での業務上のやり取りは社内外問わず行いません。誤解や思い違いを招く危険性があるからです。メールやメッセージで記録を確実に残すようにしています。親しい気心の知れた人たちとはラフなSMSを主に利用しています。ちなみにラインもワッツアップも使っていません。

 ゲームクリエイターなので、映画や音楽、小説にも触れることは非常に重要です。僕は映画を1日1本以上観るようにしています(手塚治虫先生の真似)。音楽は朝と夜、移動中に必ず聴きます。読書は週末と朝晩にそのための時間を設けています。芸術を鑑賞するには、まず1人の時間を作らなければ、と身構えるよりも、1日の生活リズムに組み込んで習慣化する方が簡単です。

 正確な情報をいち早く得るには、フェイクニュースが蔓延しているとはいえ、やはりSNSが強力です。そのコツは一次情報に近い、信頼できるアカウントをフォローすることです。例えば、デヴィッド・ボウイが逝去した時。僕は彼の息子で映画監督のダンカン・ジョーンズと知り合いで、彼をフォローしていました。彼は父のボウイが亡くなったことをどこよりも早くつぶやきました。彼のポストは疑うべくもない。そうして、僕は誰よりも早く、誰よりも正しい、悲しい情報を得たのです。

小島秀夫氏 Photo by Hiromichi Uchida (The Voice)

 今ではリアルタイムで世界中の誰とでもデジタル経由でつながることができます。20世紀には得られなかった恩恵を利用しない手はありません。今後は、もっと自由に、簡単につながれるようになるでしょう。しかし、他者や世界とつながる、つながらないは、個人が常に選択できるようにすべきです。

 すべてのつながりを国や組織に管理されたり、強要される世界は自由で民主的な社会とは言えません。この部分まではつなぐ、この人とは、ここまでつなぐというように、細やかに個人が選択できるようにすべきです。

 そもそも、すべての人間の営みをリアルからデジタルに移行させてしまうのは、危険です。人間は同じ空間を共有し、群れ、成長し、そのことで心の平穏や充実感を得る、アナログな肉体感覚を持った生き物だからです。デジタルでつながるだけではなく、実際に会ってつながる。このバランスが大切です。

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source : 文藝春秋 2025年7月号

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