日本の法律を知り尽くす彼らの物件購入にはそれ以外の目的もある
「廃業寸前のホテルや旅館があればすぐにでも買いたいです。民泊用の一軒家や区分所有マンションも買いたい。日本人は経営が下手ですよね。なんであんなに旅行者が来ているのに、潰れるホテルがあるのか分かりません」
5月中旬の香港だった。香港人を相手に日本の不動産を売る日本企業の営業現場に同席する機会を得た。商談の相手は、日本でいう三井不動産のような大企業から、小規模な不動産会社、個人のブローカー、「ピカソの絵を持っている」と話す富豪の夫人など多種多様で、計9社12名に上った。
冒頭の発言の主は、正社員2人の個人経営に近い不動産会社の社長、ゲリー氏だ。いかにもやり手という雰囲気で、真っ白いTシャツに清潔感のある青いジャケットを羽織り、その胸ポケットには白いハンカチが折り目正しく挿されていた。
「山手線内であれば、ボロ物件でもリフォームすればいいから。万博で人が集まる大阪や外国人に人気の京都や浅草なら買いたい人はたくさんいます。そういう物件情報があれば是非とも欲しい。容積率オーバーでもいいです」
容積率オーバーとは、都市計画法で定められた容積率、つまり敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合が法令の上限を超えた建物で、既存不適格建築物もしくは違法建築物だ。違法に建て増しされたケースが多く、日本の不動産会社なら「まともな人は手を出さない」と話す代物である。銀行も貸さないため現金で買うしかない。ただ買い手がいない分、格安だ。ゲリー氏にとっては、「だからこそ投資の妙味がある」ということなのだろう。
民泊で稼ぐための不動産購入
「民泊事業のメリットは、利回りが良いことと、事業にしてビザの申請ができることです」
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