ブランド帝国を築き上げた稀代の「買収マニア」 ベルナール・アルノー(LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンCEO)

世界経済の革命児 第38回

大西 康之 ジャーナリスト
ビジネス 経済 国際
ジャーナリストの大西康之さんが、世界で活躍する“破格の経営者たち”を描く人物評伝シリーズ。今月紹介するのは、ベルナール・アルノー(Bernard Jean Étienne Arnault、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンCEO)です。
201912世界経済の革命児顔写真(ベルナール・アルノー)
 
ベルナール・アルノー

ブランド帝国を築き上げた稀代の「買収マニア」

 今年4月、パリの名所、ノートルダム寺院の大聖堂が燃えた。まだ火災が収まっていなかった15日の夜、高級ブランド「グッチ」などを持つ仏ケリングの最高経営責任者(CEO)、フランソワ・ピノーが1億ユーロ(約120億円)の寄付を表明した。ところが、その翌日にすかさず2倍の寄付を申し出たのがこの男。仏高級品グループLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンのCEO、ベルナール・アルノーである。

 ピノーとアルノーは1990年代から「宿命のライバル」と言われてきた。イタリアの高級ブランド「グッチ」を巡る長い買収合戦ではピノーが凱歌を上げたが、それ以外のビジネスではアルノーが圧勝している。

 ブルームバーグ・ビリオネアーズ(億万長者)指数によると、アルノーの資産は965億ドル(約10兆4,000億円)で、米アマゾン・ドット・コムCEOのジェフ・ベゾス、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツに次ぐ世界3位。一方、フランソワ・ピノーの資産は372億ドルで世界22位だ。

 アルノーは1949年、フランス北部のルーベで不動産業を営む裕福な家に生まれ、カルロス・ゴーンも学んだエリート養成大学、エコール・ポリテクニークに進学した。一旦は家業を継いだが、時の大統領、フランソワ・ミッテランの社会主義政策を嫌い、金融業を学ぶためにアメリカに渡った。

 1984年に帰国してアガシュ金融グループを立ち上げ、「クリスチャン・ディオール」を保有していた繊維会社のマルセル・ブサック・グループを買収したのが、ブランド帝国への第一歩だ。

 飛躍のきっかけは1987年。シャンパン、ブランデーで有名な「モエ・ヘネシー」と、高級バッグなどの「ルイ・ヴィトン」が合併して、世界最大のブランド企業「ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー(LVMH)」が誕生したのだ。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
新規登録は「月あたり450円」から

  • 1カ月プラン

    新規登録は50%オフ

    初月は1,200

    600円 / 月(税込)

    ※2カ月目以降は通常価格1,200円(税込)で自動更新となります。

  • オススメ

    1年プラン

    新規登録は50%オフ

    900円 / 月

    450円 / 月(税込)

    初回特別価格5,400円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります。2年目以降は通常価格10,800円(税込)で自動更新となります。

    特典付き
  • 雑誌セットプラン

    申込み月の発売号から
    12冊を宅配

    1,000円 / 月(税込)

    12,000円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります
    雑誌配送に関する注意事項

    特典付き 雑誌『文藝春秋』の書影

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2019年12月号

genre : ビジネス 経済 国際