ジャーナリストの大西康之さんが、世界で活躍する“破格の経営者たち”を描く人物評伝シリーズ。今月紹介するのは、ベルナール・アルノー(Bernard Jean Étienne Arnault、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンCEO)です。
ベルナール・アルノー
ブランド帝国を築き上げた稀代の「買収マニア」
今年4月、パリの名所、ノートルダム寺院の大聖堂が燃えた。まだ火災が収まっていなかった15日の夜、高級ブランド「グッチ」などを持つ仏ケリングの最高経営責任者(CEO)、フランソワ・ピノーが1億ユーロ(約120億円)の寄付を表明した。ところが、その翌日にすかさず2倍の寄付を申し出たのがこの男。仏高級品グループLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンのCEO、ベルナール・アルノーである。
ピノーとアルノーは1990年代から「宿命のライバル」と言われてきた。イタリアの高級ブランド「グッチ」を巡る長い買収合戦ではピノーが凱歌を上げたが、それ以外のビジネスではアルノーが圧勝している。
ブルームバーグ・ビリオネアーズ(億万長者)指数によると、アルノーの資産は965億ドル(約10兆4,000億円)で、米アマゾン・ドット・コムCEOのジェフ・ベゾス、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツに次ぐ世界3位。一方、フランソワ・ピノーの資産は372億ドルで世界22位だ。
アルノーは1949年、フランス北部のルーベで不動産業を営む裕福な家に生まれ、カルロス・ゴーンも学んだエリート養成大学、エコール・ポリテクニークに進学した。一旦は家業を継いだが、時の大統領、フランソワ・ミッテランの社会主義政策を嫌い、金融業を学ぶためにアメリカに渡った。
1984年に帰国してアガシュ金融グループを立ち上げ、「クリスチャン・ディオール」を保有していた繊維会社のマルセル・ブサック・グループを買収したのが、ブランド帝国への第一歩だ。
飛躍のきっかけは1987年。シャンパン、ブランデーで有名な「モエ・ヘネシー」と、高級バッグなどの「ルイ・ヴィトン」が合併して、世界最大のブランド企業「ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー(LVMH)」が誕生したのだ。
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source : 文藝春秋 2019年12月号