秋の気配のなかで旅心が刺激される。暑く重い空気が去った日本の青空は高い。シニアにとっては体への負担が少ない旅が待っている。

　シニア旅というと、予算と時間に余裕がある……とまるで常套句のようにこの文言が使われる。しかし僕の周りのシニアには、「たしかに時間に余裕はできたかもしれないけど、予算といわれるとね」と言葉を濁す人が少なくない。

　日本のシニアはそれほど豊かではない。困窮するほどではないにしても、余裕などない。年金は思ったほど多くはなく、物価高を嘆く妻の声が耳に痛い。だが旅には出たい……となると、なんとか旅費を安くあげることを考えることになる。

　海外への旅を考えたとき、出費を抑えるには安い運賃の航空会社を選ぶことになる。LCC（ローコストキャリア）である。1970年代に誕生したLCCは、30年ほど前に市民権を得て瞬く間に世界の空を席巻した。利用したことのある人も多いと思う。しかしこのLCCを前に腰が引ける人は少なくない。

　たとえば多くのLCCは、チェックインカウンターで預ける荷物は有料だ。機内に持ち込める荷物は7キロ前後に制限されている。旅費を節約しようとする人は、荷物は預けず、制限重量ぎりぎりの荷物を機内に持ち込もうとする。

　航空会社のスタッフは、チェックインカウンターや搭乗口で、大きな荷物を手にした乗客に目を光らせるようになる。そこに生まれる空気はどこか刺々しい。そして乗り込むLCCの機内は狭い。足を折り曲げるようにして座ることになる。LCCの旅は耐えるもの――。そんな経験が旅への思いを萎縮させてしまう。

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3. 賢い大人の旅「快適＆倹約」発想術　フェリー、LCCのフラットシート、インバウンド路線を逆利用…