■連載「日本人へ」
第260回 愛の讃歌
第261回 外交オンチは国民病?
第262回 「勝てば黄禍、負ければ野蛮」
第263回 戦争よりも、大切なのは戦後
第264回 今回はこちら
この句を知ったとき思った。こんな一句を漱石が捧げてくれるのならば死んでもいいな、と。
ところが、ちょっと調べただけでたちまち正気にもどったのである。漱石が贈ったこの一句の相手は大塚楠緒子という名の女人で、一高時代からの友人の奥さんで文章などもちょっとはモノする人であったらしい。
そんなことよりも重要なのは、漱石の言葉によれば「芸者みたい」となる美人で、しかも肺病で死んだのが三十五歳の年。美人薄命の典型ではないか。それで、当時は同じ年頃であった私も考えた。これはもうあきらめるしかない、人に惜しまれての若死にという死期を逸したからには、これからも生きつづけるしかない、と。
といってその後も健康に気をつけて生きたわけではない。それどころか、健康に悪いとされていることばかりをして生きてきた。
人生五十年ならば酒もタバコも三十年ずつで合計すれば百十年、と言っていた父親に育てられたので、酒もタバコも味わう。そして男。
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source : 文藝春秋 2025年10月号


