今回の自民党総裁選挙は、農水相だった小泉進次郎が動いて火蓋を切り、始まったものだ。
9月に入っても「誰かが私を無理やり引きずり降ろそうとしている。この難局で責任放棄するわけにはいかない」と言い張り、総理の座に恋々としがみつく石破茂に、進次郎は苛立ちを隠せなくなっていた。
「このままでは自民党が分裂してしまう。今そんなことをしている場合ではないでしょう。もどかしい」

総裁選前倒しを求める書面の提出日を2日後に控えた9月6日、痺れを切らして、元総理の菅義偉と総理公邸に石破を訪ねた。30分ほど経って、言いたいことを吐き出した菅が「そろそろ」と立ち上がる。進次郎も一緒に退出しようとすると、石破が引き止めた。
「小泉さんも行くの? もうちょっと話さない?」
1人残った進次郎に、石破は思いの丈をぶつけた。少数与党でも予算を年度内に成立させたこと、トランプ米大統領との関税交渉がどれほど大変だったか、選挙の敗北を人のせいにする若手議員たちの劣化ぶり、高騰するコメの値段を下げるために2人でどれほど頑張ったか――。
進次郎が黙って聞いていると、頑なだった石破の心が徐々にほどけていった。すかさず進次郎は説いた。「総裁として自民党を分裂させることは、避けなければいけない。石破総理の思いはみんなで引き継ぎます」。この夜、石破は最後まで「辞める」とは口にしなかったが、納得した表情を浮かべていた。
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