ベテランジャーナリスト・井上久男氏が「ジャパンモビリティショー」を取材。そこで見えた各社の課題とは?
BYD初の「海外専用モデル」は、日本向け軽自動車EV
2年に1度開かれる国内最大の自動車ショー「ジャパンモビリティショー」(10月31日~11月9日)が始まった。一般公開の前に開催された報道陣向け「プレスデー」に参加してきたのでレポートしたい。
今回のショーで筆者が最も注目しているのが、スズキとBYDの「軽自動車EV対決」だ。BYDは2024年の世界新車販売ランキングでホンダと日産自動車を追い抜き、世界7位に急上昇中。そのBYDは今回、2026年夏に日本市場に投入する軽自動車EV「ラッコ」を初公開した。
実は、軽自動車は国内の新車販売台数で約4割を占める一大マーケットであり、日本メーカーがほぼ独占している。つまり、成長著しいBYDが、「軽自動車の王者」スズキを筆頭とする日本メーカーの牙城に殴り込みをかけると宣言したのだ。
ラッコは日本市場専用に設計された車種。日本で売れ筋の「スーパーハイトモデル」と呼ばれる車高の高いデザインを採用し、BYDでは初の海外専用モデルとなる。アジア地区の自動車事業の責任者であり、BYDジャパン社長を兼任する劉学亮氏は「日本にフルコミットしていく」と、鼻息荒く意気込みを語る。
価格や航続距離は明らかにされなかったが、航続距離が長いモデルと短いモデルの両方を用意するという。短距離モデルは、バッテリー容量が小さい代わりに、低価格に抑える戦略だろう。

都市部ほど公共交通網の発達していない地方では、乗用車は「1人1台の生活必需品」だ。年金を受給する高齢者層など、可処分所得が少ない顧客が買いやすい価格帯に設定できれば、BYDが市場に食い込める可能性はある。また、メインの乗用車のほかに、近場の買い物や通院などに使うセカンドカーとして軽自動車を保有しているユーザーも多い。短距離モデルは、セカンドカー需要も狙っているのだろう。
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