三宅香帆『考察する若者たち』

第23回

平山 周吉 雑文家
エンタメ 社会 読書

「最適化」してしまう令和世代

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)で新書大賞2025の大賞を受賞した三宅香帆の、本書が若き日の代表作になるだろう。

 新書大賞受賞作は、私にはタイトル先行ではないかという疑問があった。しかし『考察する若者たち』は、「報われ消費」と名付けた、令和世代のせつない消費行動を多角的、総合的に分析して、時代を切り取っている。そこには広告代理店的発想には陥らない、確固たる姿勢をも感じさせる。

三宅香帆『考察する若者たち』(PHP新書)1100円(税込)

「考察」とは「作者が提示する謎を解くこと」、その対として「批評」=「作者も把握していない謎を解くこと」がある。時代は「正解」を求めて、「考察」へと大きく傾斜している、という。

「ここで自分自身の『ネタバレ』をすると、私は『批評の時代』を生きてきた人間の1人である。なんせ肩書きは文芸評論家である。(略)作者の正解なんてくそどうでもいい。だからこそ、ぶっちゃけ、考察の時代の台頭に驚いている」

 こんな軽いノリで、「文芸評論家」なんていう損な肩書きを愛用しているのは不思議だが、どうも本気らしい。先達として名を挙げているのは、小林秀雄、柄谷行人、吉本隆明の3人だ。「過剰なまでに固有名詞が意味をもつのが批評文化だった」。ところが「考察」の時代は、語り手の個性なんて邪魔くさい。「自分らしさ」が「生きづらさ」に通じてしまう、今の「プラットフォーム社会」に「最適化」してしまう令和世代に、著者は先輩として、大声で呼びかける。

「アルゴリズムに評価されない、数値に変換されない、そういう自分の欲望や解釈や好きなものこそ、自分自身の固有性を教えてくれる」

 こうやって私が本書の紹介をすると、なんだか説教くさい本に思えてしまうかもしれない。だとしたら、その責任は著者ではなく、私のほうにある。31歳の文芸評論家は、令和世代にもっと身を寄せて言葉を発している。ほんとうは、新書判といった形ではないほうが伝えやすいのかもしれない。

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source : 文藝春秋 2026年2月号

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