
■連載「古風堂々」
第75回 メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン
第76回 失われた典雅な日本語
第77回 そして、ヘマはつづく
第78回 百助主義
第79回 落ちる人、落ちない人
第80回 今回はこちら
東京のある女子中高一貫校でサングラス着用が解禁された。紫外線から目を守るためだ。WHOによると、十八歳までに生涯に浴びる紫外線の半分以上を浴びるという。紫外線はシミ、白内障、皮膚ガンなどの原因となりうることが知られているから、若いうちは過剰に浴びない方がよいというのだ。紫外線が格段に強いオーストラリアでは、サングラス着用が義務化されている公立小学校もあるという。
かつては、「紫外線を浴びて、風邪をひかない小麦色の健康な肌をつくろう」とよく言われた。一九七〇年代、夏目雅子さんや南沙織さんがしばしば美しく陽焼けした身体で週刊誌に登場していた。戦前から学校、海軍、刑務所などでは上半身裸で「天突き運動」が行なわれていた。スクワットで伸び上がる時に万歳する体操だ。母も私に幼い頃から日光の御利益(ごりやく)を口うるさく説いた。夏にはよく市営プールに行かされたし、暖かい冬の日には「縁側で太陽に向かって口を開いていなさい」などと言われた。中高のサッカー部時代は帽子もなしに、一年中グラウンドを走り回っていた。幼い頃からほぼ毎年、夏の一カ月を過ごした信州の祖父母の家は標高一一五〇メートル、三十代前半、教えていたコロラド大学は標高一六〇〇メートルの高地にあった。高地では上空で紫外線を吸収したり散乱するエアロゾル(大気中に漂う微粒子)の層が低地に比べ薄いから、紫外線は強いまま地表に届く。母の教えに忠実な私は、コロラドでは毎週末、半ズボンに上半身裸でフットボール場を何周も走った。学生思いでもある私は、昼食のため食堂へ行くのにしばしば遠回りして学生寮の脇を通った。女子学生達がちゃんとビキニで日光浴をしているかを確認したのだ。
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