めくるめく言葉のセッション
読んでいるあいだじゅう胸の疼きが止まらず、『おにたろかっぱ』の世界に浸り込んでいた。
父ちゃん48歳、母ちゃん38歳、タロ3歳、東京から三浦半島の町に引っ越してきた3人家族の日々。それなりにヒット曲(「死神喫茶でくたびれて」)もあったけれど目下は売れないミュージシャンの父ちゃんには、タロといっしょに過ごす時間がたっぷりある。寝かしつけるとき、自分が楽しみたいので落語を流していたら、タロは古今亭志ん朝の口真似をするようになった。オムツの具合を知らせるときは「ちょいと、オムツがパンパンになっちまってるよ」「あの、おしっこしてぇんだが、おトイレにつれてってくんねえか」。そもそも父ちゃんと母ちゃんは赤ちゃん言葉を使わずに接しているから、3歳児のタロは真綿が水を吸い込むみたいに言葉の成長を重ねてゆく。タロとの会話は、さながら言葉のセッション。

「ねえタロ、さっきは、『うるせえ』なんて言ってごめんね」と父ちゃんが言う。
「もういいよ」
「もういいか。そんでさ、さっき上田ウシノスケをリュックから出してたけど、なにしてたの?」
「ちんもんきょうからちんもんかいきょうを、みせてあげてたの」
凝り固まったアタマがゆるりと解ける心地がする。タロは英語の歌も「わっちゅわどぅー」とそれっぽく歌い、チンチロリンが得意だけれど、水洗トイレでうんちが流れていくのを見るのは怖い。
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