だから何?

第23回

大栗 博司 物理学者

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ビジネス サイエンス

 この原稿を書いているのは2025年の年末です。私は8月にカリフォルニア工科大学の理学部長(物理学・数学・天文学部門長)に就任し、大学としての対応に関わる立場になりました。

 今年、米国の大学は嵐に見舞われました。第二次トランプ政権の発足により、大学や研究をめぐる政策が大きく転換したからです。

 大統領府は連邦議会に対し、研究助成金を含む歳出を大幅に削減する予算要求を行いました。これがそのまま実現すれば、大学での研究は深刻な打撃を受けるところでした。

 しかし、議会の予算審議が遅れ、バイデン政権下の前年度予算を暫定的に維持する「つなぎ予算」が繰り返し採用されてきました。そして、この原稿を校正しているときに、研究助成金を前年度レベルに維持する歳出法案が、上下院とも超党派かつ圧倒的多数で可決されました。

 その結果、今年1年間で私の大学が連邦政府から受け取った研究助成金の総額は、最終的には昨年を上回ることになりました。

 大学基金の運用益への課税や間接経費割合の削減に関する懸念もありましたが、裁判所や議会による三権分立が機能しているため、今のところ大きな問題にはなっていません。

 とはいえ、これで安心できるわけではありません。研究支援の将来が見通せない状況は、大学の長期計画を困難にします。たとえば、私の大学が運営を委託されているジェット推進研究所(JPL)は、米航空宇宙局(NASA)からの予算に不安があるため、職員の1割に当たる約550名の解雇に踏み切りました。

 第二次世界大戦以降、米国では、政府が研究費を支援し、大学が施設と人材を提供するという社会契約が、長く維持されてきました。今回の政策転換が一過性のものにとどまるのか、それともこの社会契約そのものが転換点を迎えているのかは、まだ見えていません。

 このような状況下では、大学の限られた資源をどのように配分するかの判断が重要になります。

 その際、私が指針のひとつとしているのが、「ハイルマイヤーの問い」です。これは、1975年から2年間、米国国防高等研究計画局(DARPA)の局長を務めたジョージ・ハイルマイヤーが、在任中に考案したものです。

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source : 文藝春秋 2026年3月号

genre : ビジネス サイエンス