いま知っておくべき論点を、専門家がコンパクトに解説する「文藝春秋オピニオン 2026年の論点100」。この人気ムックの記事を「文藝春秋PLUS」でも紹介します。
2026年は日本の家族の転換期としなければならない。2024年に民法の家族法に当たる部分の一部改正案が衆参両院で可決・公布となって、いよいよ26年5月までに施行、国民全員に適用されるのである。
改正民法の核は、離婚後も共同親権を選択できることだ。この国では明治民法が施行されて以来、じつに126年ものあいだ子どもがいて離婚すると、父母のどちらかが親権を持つ単独親権だったのである。これは世界的にも珍しく、G7では日本だけだったのだ。3組に1組が離婚する国にもかかわらずこの状態で、単独親権下での悲劇は惨憺たるものだった。
幼い子どもの親権を取るのは約9割が母親で、離婚後は父親と子どもを会わせることが少ない。それどころか、離婚前から子連れ別居して父親との関係を断つかのような振る舞いが頻発してきた。単独親権で培われたのは、まさに「縁切り文化」で、これによって自死という不幸な選択に追い込まれる父親も出てしまったのだ。世間の多くは母子擁護である。
私は2019年に「離婚後も共同親権」を公約に掲げて参議院議員に当選した。すると永田町と滋賀県大津市の私の事務所には、実子との関係断絶に苦しむ父親たちを中心に、単独親権の犠牲者たちの訪問が相次いだ。まるで駆け込み寺となったのだ。こうした方々との共闘の経緯、国会での審議は、拙著『子どもは誰のものか? 離婚後「共同親権」が日本を救う』(文春新書)に詳しく綴った。
私は、離婚後の共同親権を盛り込んだ法律改正の向こうに、たとえ両親が夫婦関係を解消しても子どもの共同養育が継続される社会の実現を見ていた。共同養育は文化である。法律は文化を醸成する基盤だが、今回の民法改正は共同養育を醸成する内容とはほど遠い骨抜き改正だった。それに対する政治家としての無力感、ひとりの人間としての憤りが、大急ぎで新書をまとめた理由である。どこが骨抜きなのか。簡潔にいえば、子どものためになっていないのだ。
子どもとの関係を断たれた片親も犠牲者だが、片親との縁を切られてしまった子どもの傷は果てしなく深い。児童心理学の最新研究でエビデンスが出ている。じつは、日本政府が離婚後の共同親権を可能にする民法改正に踏み切った背景には、子どもに対する考え方の世界的な変化があった。「児童の権利に関する条約(通称は子どもの権利条約)」が、1989年の国連総会で採択され、翌年に発効して日本も1994年に批准した。この条約は、子どもをこれまでの弱いものとして守るべき存在から、幼くても基本的人権を有する存在として支えていこうという概念変革を促すものだ。
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source : ノンフィクション出版 2026年の論点


