いま知っておくべき論点を、専門家がコンパクトに解説する「文藝春秋オピニオン 2026年の論点100」。この人気ムックの記事を「文藝春秋PLUS」でも紹介します。
南米ペルー南海岸の乾燥地帯に広がるナスカ台地には、ユネスコ世界文化遺産に登録された「ナスカの地上絵」が描かれている。20世紀初頭に発見されて以来、人々を魅了し続けてきた。
ナスカ台地には、放射状に延びる直線群と、動物や人間などの具象的地上絵がある。後者には描法の違いから「線タイプ」と「面タイプ」があり、線タイプは一筆書き(平均約90m)、面タイプは黒白の面で表現(平均約9m)される。

1980年代、米国の調査団は約3年をかけてナスカ台地を踏査し、具象的地上絵32点、幾何学図形227点、放射状直線762本、そして、62箇所の中心点を確認した。しかし、ナスカ台地は東京23区の約3分の2にあたる400平方キロメートル以上の広さを持ち、徒歩では全域を網羅することは困難である。地上絵の目的については、天文学説、灌漑・農業説、巡礼・祭祀説、芸術表現説など多様な仮説が提案されたが、分布や数量の基礎データが不足しており、いずれも確証に至らなかった。
分解能約60cmの衛星画像を提供する商用衛星「QuickBird」の登場によって、調査環境は一変した。2004年、山形大学でナスカの地上絵を研究するプロジェクトが発足し、この衛星画像を用いて約5年間にわたり全域を解析した。その成果として、ナスカ台地全域の地上絵分布図が初めて作成され、世界遺産登録時の地図には含まれていなかった多くの直線群が新たに確認された。
8年間におよぶ現地踏査の結果、165箇所の中心点から放射状に延びる1335本の直線が記録され、大規模な直線ネットワークが存在することが明らかとなった。この過程で、面タイプの地上絵が小道沿いに集中分布することが判明し、後の空撮研究の基礎知見となった。
2016年には分解能10cmの航空写真が入手可能となり、従来の衛星画像では識別できなかった小型地上絵も明瞭に確認できるようになった。しかし、画像解析を人力で行う場合、全域の分布図作成には10年以上を要すると見込まれた。そこで、調査効率を高めるため、面タイプが集中する小道沿いを中心にドローン空撮を実施した。その結果、300点以上の新たな地上絵を確認できたが、ドローンの運用や画像の目視確認には依然として膨大な時間を要し、全域の調査には限界があった。
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