編集長1冊目で身に染みた田中角栄の「金言」

編集長ニュースレター Vol.1

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 いつもお読みいただき、ありがとうございます。4月より「文藝春秋」編集長となりました加藤晃彦と申します。自己紹介をさせていただきますと、1974年(昭和49年)広島県生まれの52歳。「文藝春秋」1974年11月号に掲載された「田中角栄研究」で知られるノンフィクション作家の立花隆さん(元文藝春秋社員でもあります)に憧れて、文藝春秋に入り、営業部、「週刊文春」編集長などを経て、前職は経営戦略企画部長として2年9カ月、会社の中期経営計画を作ったり、資産運用を担当しておりました。

「文藝春秋」編集部は2回目。前回いたのは、2011年の東日本大震災直後でした。あれから15年、編集長になってまず戸惑ったのが、ページ数が多い! 企画を発注して発注して発注して、まだ足りない。メドがついたのは、締切1週間前でした。

 1冊目を作って、身に染みたのは田中角栄が選挙に勝つ秘訣として語った「握手した人の数しか票は出ない」という言葉。これを「文藝春秋」に置き換えると「会った人の数しか企画は出ない」。

田中角栄 ©文藝春秋

 今号の巻頭記事「高市早苗研究第1回 総理の夫初告白20時間」もまさにそうでした。当社で人事が内示された日、ジャーナリストの河野嘉誠君がお祝いの連絡をくれました。河野君は、私が「週刊文春」編集長時代に、「サンデー毎日」からスカウトして、一緒に働いた仲間です。その後、フリーとなり、政治ジャーナリストとして活動していました。「メシでも食べよう」とランチすることになり、久しぶりに会うので、河野君が最近書いた記事を読んでいると、「週刊現代」で高市首相の夫・山本拓氏のことを書いた短い記事の中に、拓氏との一問一答が載っていたのです。

山本拓氏 Ⓒ時事通信社

 これを読んで驚きました。高市氏が日本初の女性首相となったことで、日本初のファーストジェントルマンになった拓氏ですが、彼の肉声は、就任直後に短く報じられたのみだったからです。通常、新総理が誕生すると「奥さんはどんな人?」という報道が出るのはテレビ、新聞、週刊誌を問いません。ところが、今回はほぼ報じられないので、不思議に思っていました。それなのに、拓氏とやり取りしている⁉ ランチの席で「あの記事、拓氏と話したの?」と聞くと「話しましたよ。こないだも電話で話しました」と言うのです。

 拓氏を巡っては、「脳梗塞を患い、歩けない」「高市氏は公邸で自ら介護しており、風呂にも入れている。そのため、睡眠時間を削られている」と永田町で囁かれていました。ただ、河野君の話を聞くと、そこまで体調は悪くなさそうです。高市氏は、初の女性総理として歴史に名を刻みました。その最も身近にいる人物の証言は、高市氏を知る上で欠かせないものです。ぜひ、拓氏の肉声を「文藝春秋」に載せようと河野君と一致しました。ただ、簡単な話ではないとも思っていました。拓氏は雑談はするものの、高市氏の話となると口が堅くなるとのことでした。300ページを超える「文藝春秋」に載せるとなると、一言二言では記事になりません。「いつかできたらいいな」とぼんやり思っていました。

高市早苗氏 ©時事通信社

 ところが――。なんと、河野君は拓氏から20時間、話を聞くことに成功したのです。河野君という記者は不思議な男です。振り返れば「週刊文春」時代から、政治家の懐に飛び込んで、相手をしゃべらせる愛嬌がありました。

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