2020年1月2日付でサッカーJ2リーグV・ファーレン長崎の代表取締役社長に就任した。経営破綻寸前までいった地方クラブを、地元企業であるジャパネットホールディングスが引き継ぐ決意をしたのがつい3年前の2017年4月。当時は広報担当として一通りの出来事に立ち会ったが、まさか自分が社長としてこのクラブに携わることになろうとは。
長崎に生まれながらも、中学から外に出た私にとって、長崎という地は近くて遠いものだった。それがこの1年半で、幼い頃の記憶を時に引き出しながら、自分の人生の大きな一部にまで変化していったのである。
私が具体的にV・ファーレンの仕事に関わり始めたのはグループ化から1年後の2018年4月だった。奇跡の昇格を成し遂げ、初めて臨むJ1の舞台。それは選手達だけでなく、運営側にとっても、予想以上に大変なものだった。ホーム開幕戦、最悪の運営をしてしまい、お客様をがっかりさせた。会議で対策を考えたが一向に進まず、その場の勢いにも近い形で、自分が兼務して何とかしたいと手を挙げた。そこから今まで、ホームゲームの運営や、グッズ開発、広報・プロモーション等を担当し、ファンや県民の皆さんに喜んでもらえるクラブを目指した。至らぬことばかりだが、その過程で長崎の持つ魅力に何度も触れ、心が動かされていった。
長崎は観光地として人気があり、その異国情緒あふれる空気感は他県にはない強みである。しかしその一方で、県庁所在地である長崎市は人口流出を続け、2018年には全国の県庁所在地で1番の流出超の地となってしまった。
若い人とたまに話すと、長崎を愛しはしているが、外に出てみたいらしい。かくいう私も、長崎に故郷意識を持ちつつ、やっぱりそこに住むことは考えられなかった。言い方は悪いが、やや保守的でちょっと要領が悪い。伝統を大切にし、自分たちの土地に安心と誇りを持っているが、新しいものを取り入れる思い切りがない。変わることの必要性を感じていないのかもしれないし、それが若い人には不安なのかもしれない。
でもアウェイから来た人を心からもてなし、お人よしと言えるほど受け入れる。サッカーファンを気取りたければ、それだから勝てないのだと言えもするだろう。でもそれが長崎の良さなのだと私は思う。
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source : 文藝春秋 2020年2月号