保井コノ 91歳まで勉強し続けた女性博士の第一号

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保井(やすい)コノ(1880―1971)は香川県生まれ。細胞学者で女性博士第一号。戦前女子教育の最高峰にあった東京女子高等師範学校に学んだ理科第一回の卒業生。科学分野で初の女子官費留学生として米国シカゴ大学、ハーバード大学に学ぶ。昭和2(1927)年「日本産石炭の構造の研究」により理学博士号を取得。教え子は物理学者・湯浅年子など数多いが、神奈川歯科大学教授・理学博士の三木寿子(みきひさこ)氏もその一人である。

 

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 昭和18年、私が東京女子高等師範学校(現お茶の水女子大学)に入学したとき、上級生から「保井先生は怖い先生だ」と聞かされていました。でもちっとも怖くなかった。ただ、すごく真面目な先生だったから、廊下から先生のヒールの音が響いてくるとみんなシーンとなって一生懸命勉強していましたね。

 卒業して植物学会でお会いした頃、先生は70歳代でしたが、いつもピシーッとしていらして、150センチの小柄な方なのに私は駆け足で歩かないとついていけませんでした。四国の裕福な家庭に育ったせいでしょう、貧しい学究生活をしているときでもキチンとした洋服を着て、真珠も本物、貴婦人のかぶるような黒の帽子(ハット)をかぶっていらした。

 女が勉強しにくい時代でさぞ大変だったでしょうと聞かれても「私はみなさんによくしてもらったから辛いことはなかった」と答えていましたが、それは先生がもっと勉強したいという一念で女高師→東大→アメリカ留学と進んだからだと思います。

保井コノ ©文藝春秋

 ハーバード大学では石炭の研究者ジェフレー教授のもとで、石炭の構造からもとの木を調べる新しい研究方法を修得、とても喜んでいたようです。教授は「あなたのために世界の石炭の中から日本と満州は残しておく。日本へ帰ったら是非研究するように」とすすめた。これが保井先生のライフワークのひとつともなり学位論文ともなったわけです。

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source : 文藝春秋 1990年2月号

genre : ニュース サイエンス