大山康晴 神経戦の極意

加藤 一二三 将棋棋士

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昭和30年代から40年代にかけて、5冠独占など、無類の強さを発揮した将棋棋士、大山康晴(おおやまやすはる)(1923―1992)。その全盛期に数多の名勝負を戦った後輩の棋士、加藤一二三(かとうひふみ)九段(1940―2026)が語る、その強さの秘密とは。

 

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「加藤さんにはいずれ、負かされる日が来ると思います」

 大山先生が記者会見でこう発言されたのは、1960(昭和35)年の名人戦でした。当時、私は20歳。大山先生のもつ名人位に初めて挑戦し、1勝4敗1千日手で敗れました。当時の私には、その真意がわかりませんでした。

 最近になって当時の棋譜を調べてみたところ、私には勝つチャンスがあったにもかかわらず、それを逃していた対局が2局ありました。いまならそれを見逃すことはないでしょう。大山先生はちゃんとそこに気づいて、成長分を加算すればいずれ負かされる、と予見されたのだと思われます。

大山康晴 ©文藝春秋

 それにしても、わざわざそれを口に出す必要などないのに、なぜ、私を励ますような発言をされたのか。

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source : 文藝春秋 2013年1月号

genre : エンタメ アート