歌謡界に一時代を築いた作詞家であり、最先端の女性のライフスタイルを提案し続けた安井(やすい)かずみ(1939―1994)。昭和52(1977)年に、8歳年下の音楽家加藤和彦と再婚同士で結婚。その結婚生活は、理想の夫婦像として女性達の絶大な支持を集めた。ジャーナリストの大宅映子(おおやえいこ)氏は、最後の10年間、家族ぐるみの親交を続けていた。平成6年、肺がんで逝去。享年55。
zuzu(ズズ)(安井さんの愛称)はあの世ですごく怒ってると思うな。和彦さん(加藤和彦)が、zuzuが亡くなってすぐ中丸三千繪さん(オペラ歌手)とつきあい、一周忌の前に婚約したでしょう。だって、和彦さんと再婚してからのzuzuは、それまでのライフスタイルから、100パーセント生活を転換させて、誰もがうらやましがるかっこいい、夢の夫婦というイメージを築きあげたわけでしょ。

聞いた話なのですが、その前の彼女は、芸能界のお友達と、それは派手な遊び方をしていた「最先端の不良」だったらしいんです。世界中をまたにかけて恋をして、夜遊びをして。六本木のキャンティや赤坂のムゲンで朝まで飲んで騒いで、目白の高級マンションに帰ってきて、倒れ込むみたいに眠るという生活だったらしいですよ。ベネチアで酔いつぶれてゴンドラに乗って、運河に落っこちてしまったりとか。このエピソードは、加賀まりこさんのことにして話していたけど(笑)。それで自分は、和彦さんとの再婚と同時に、完全に昼の生活に切り換えてしまったみたいですよ。

彼女とは10年間、前半はテニス、後半はゴルフをおおいに楽しみました。特に、ハワイのカパルアの彼女の別荘で毎夏過ごしたことは、素晴らしい思い出ですね。彼女に言わせれば、「世界中歩いて、ここに決めたんだから。同じハワイでも、カパルアだけはランクが違うのよ」ってね(笑)、自慢の別荘だったんです。
彼女は、ランクとか分相応ということに、うるさかったの。若い子がブランド物を持ったり、ゴルフをしたりしてると「30年早いわよ」って怒ってた。それは若い子に対してだけじゃなくて、仲のいい友達の森瑤子さんに対しても同じで、「シャネルを好きっていうなら、タンス二さお分くらい、シャネルを買ってからにしてよね」って、ぴしゃっとやっつけてましたよ(笑)。彼女自身、パリで生活していた時、そういうことを学んでいましたから、自分に対しても厳しかったですね。どんなに好きでも、エルメスのケリーバッグは50歳になってから、と決めていて、買っても使わずにしまってありました。

とにかく頑固だったし、思い込んだら絶対なんです。彼女は、和彦さんと結婚してから17年間、2人で世界中を遊び歩いていても和彦さんが大好きなロンドンには、一度も行かせなかったんですよ。理由は、和彦さんの前の奥さんが住んでいるから(笑)。和彦さんにしてみれば、ロンドンが好きなだけなのにだめといったらだめ(笑)。そういう意味では、許容範囲が狭いというか、一途に突っ走る人でしたね。
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source : 文藝春秋 1998年12月号

