「マスコミの帝王」と呼ばれ、テレビ、新聞、雑誌で縦横無尽に活躍した大宅壮一(おおやそういち)(1900―1970)。「一億総白痴化」や「恐妻」という時代を捉えた言葉を生み出したジャーナリストの素顔を、評論家として活躍する三女で大宅壮一文庫理事長の映子(えいこ)氏が語る。
父の死後、母が『大きな駄々っ子』という本を書きましたが、家での大宅壮一はまさにその題名の通り。取材などで留守が多かった父は、細々とした父親らしいことを何もやりませんでした。
私たち子供に訓示をたれるようなこともなく、書斎にこもって原稿を書いたり、資料を読んだりしている。出版社の人が来て楽しそうに話をしているのを聞いて、「あ、お父さんはそんなことしていたんだ」とわかる程度。私にとっては「大宅壮一」と同居している感じでした。

家の中のことをすぐにテレビで喋るから困ってしまったこともあります。「うちは雑草教育だ」と発言して私たちが周囲から過剰に心配されたり、「恐妻」なんて言われた母は「あの大宅壮一が恐れるとはどんな奥さんなんだ」と誤解され、真剣に怒っていた時期もありました。
「世界の裏街道を行く」の取材の時は半年も家を空け、ブラジルで殺されたなんて噂が立ったこともありました。見かねた姉が「婦人公論」に「わが家の不在地主」というこんな文章を寄稿したことがあります。
〈私は妻として、母としての母を誇りに思っています。でも、父を誇りにできるかしら?〉
そうしたら父は「飼い犬はアホだから餌をくれる女中さんを飼い主だと思ってシッポを振る」とある雑誌で反論。大人気ないというか、なんというか(笑)。いずれにせよ、しっかりものの母がいなければ家は回らなかったのは間違いありません。
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source : 文藝春秋 2017年4月号

