“時代を作った人たち”の本音に迫る対談企画「有働由美子のマイフェアパーソン」。今回のゲストは、作家の林真理子さんです。
■はやしまりこ 作家。1954年、山梨県生まれ。日本大学芸術学部卒。日本大学理事長、日本文藝家協会理事長を歴任した。現在、直木賞選考委員などを務める
■連載「有働由美子のマイフェアパーソン」
第87回 秋元康(作詞家)
第88回 杉村太蔵(元衆議院議員・投資家)
第89回 山口智子(俳優)
第91回 井上樹彦(NHK会長)
第92回 林真理子(作家) 今回
有働 このたび日本大学理事長を退任なさったのですよね。
林 はい。6月24日をもって、任期満了で退任しました。
有働 4年間お疲れ様でした。とても消耗されているのではないかと思って心配していましたが、お元気そうでよかったです。

林 昨日はサッカーワールドカップの日本─ブラジル戦を観て、半徹夜でヘロヘロでしたけどね(笑)。
有働 同じです。試合後も悔しさと興奮とで眠れなかったですよね。もう普通の生活に戻りましたか?
林 日大が終わってもなんだかんだ忙しいです。でも朝から作家として仕事ができるって夢のよう。
有働 どういうことですか?
林 理事長だった時は午前9時半頃には迎えの車が来たので、朝、自分の仕事をする余裕なんかなかったんです。だから今は夢のようです。
「日大事件」と世間の誤解
有働 4年間ずっと大変な生活を続けたからこその感慨ですね。
林 頭に来るのは、会う人会う人に「大学には週何回行っているのですか?」と聞かれたこと。ちゃんと毎日行っていましたよ! 時期によっては土日も、地方の校友会やオープンキャンパスなどがありました。
有働 今日は全部ぶっちゃけて話してください!
林さんは1982年に出した1作目のエッセイ『ルンルンを買っておうちに帰ろう』からベストセラーになり、86年に直木賞を受賞。人気作家であり続けながら、2022年、母校である日本大学の理事長に就任。脱税事件で逮捕・起訴され辞任した前理事長のカラーを一新し、立て直しに尽力されました。ただ、この4年間にも不祥事などがあって、林さんが世間に誤解されている点もあるかと思います。
林 すごくあります。
有働 自戒の念を込めて言うのですが、メディアは話題になった瞬間だけを切り取り、その後のフォローがないことも多い。今日はそのあたりも追ってお聞きしていきます。まず、1期での退任です。もう1期やろうとは思わなかったのですか?

林 いろんな方から「もう1期やってください」と言われましたが、やるだけのことはやりましたし、私も作家に戻らなきゃいけない。この辺が潮時だと思って退任しました。ただ、退任を惜しんでくださる方々が、縁が切れるのは寂しいと言ってくださり、今度は日大の校友会の会長をやることになっています。

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林真理子(作家)
有働 理事長としての自己評価はいかがですか?
林 「本当によく頑張った、私ってやるじゃん」という感じかな。大変な時に投げ出さないでよかった。自画自賛と思われそうですが、監事4人の報告書が公開されており、いずれも高く評価してくれています。大学のHPに出ています。
有働 女性として初の理事長でもあり、就任会見の「マッチョな体質の古さを変えたい」という言葉が話題になりましたが、実際入ってみて「ヤバッ!」という感じでしたか。
林 「ヤバッ!」でした(笑)。職員に聞くと、「林理事長はこわいかも、何をされるのだろう」と皆ドキドキしていたと言うんです。私の方は、キャンパスを学生と一緒に歩く姿を想像していたのですが、日大本部はキャンパスとは別の場所にあって、学生は1人もいない。当時の私は「見かけるのはおじさんばかり」とよくこぼしていましたが、最初はすごくアウェーでしたね。
本質的なことは知らされなかった
有働 理事長はすべての決定権がある最高権力者ではないのですか?
林 トップの地位ですが、私は就任時に、理事長選考委員会の方々から「前理事長は教学にも口出ししていたけれど、絶対そうしないように」と釘を刺されていました。
有働 教学っていうのは?
林 学生に直接かかわるすべてのこと、たとえば学部の学問領域とか、競技スポーツとか。だからスポーツのことは途中まで本当に知らないことばかりだったんです。ある時から口出しせざるを得なくなりましたが、当初はちびちびとしか情報が入ってこないし、本質的なことは知らされていなかったように思います。
有働 「ある時」というのは、2023年にアメリカンフットボール部員が麻薬取締法違反の罪で起訴された事件の時のことでしょうか。
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