土門拳とお水取り

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 ようやく秋がきた。その秋の日ざしの下、「8人の写真家たち」という展覧会が足利市立美術館で開かれている。土門拳、石元泰博、薗部澄、井上博道、比嘉康雄、江成常夫、みやこうせい、大村次郷の8人である。私がかつて雑誌「太陽」や単行本などで関わってきた写真家たち、その写真や仕事で蒐めたものが展示されている。

 筆頭の土門拳には「太陽」1968年新年号に「東大寺・お水取り」を撮って頂いた。『筑豊のこどもたち』の写真家に、二月堂の欄干の上から突き出され、火の玉となって漆黒の闇夜に消えていく松明のさまをぜひとも撮って頂きたかったのだ。

土門拳

 しかし、このとき私はまだ入社5年目の駆け出しである。いまだお目にもかかっていない。先輩から奈良まで来い、といわれた。土門拳は撮影の合間、三月堂の本尊前の腰掛けに休んでいられた。仰ぎ見る御本尊は不空羂索(ふくうけんさく)観音、花形の天蓋を突き破らんばかりの偉容で立ち坐(いま)す。頭上の宝冠の鍍金(ときん)の光が煌めく。戦前の話であるが、この宝冠が盗まれた事件があった。

──あの宝冠をだよ、いつ、どうやって盗ったのだろう。

──先生、いまです、こんな時です。

 堂内は拝む人、本を片手に仏像を見る人、観光客…。

──いまなら、後ろにハシゴをかけて、作業服に白い手袋で頭上から外していても誰もフシギに思いません。

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source : 文藝春秋 2026年11月号

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