鹿児島県・奄美大島を拠点に、亜熱帯の動植物をユニークな日本画で表現した田中一村(1908~77)。没後に評価され、「日本のゴーギャン」とも呼ばれた。その孤高の人生を田中一村記念美術館(奄美市)の学芸員・谷口博文氏が語った。

田中一村がいまなお、人を惹きつける理由は、生涯絵を描き続けた生き様と多岐にわたる作品が響き合っているからだと思います。
一村が奄美に移住したのは、50歳のときでした。地元の方々からの評価は「変わった絵かき」。菜食主義者で、スラリとした体形にランニングシャツを着て、晴れた日でもこうもり傘を突いて歩く。身長が180センチもあったので、子どもたちからは「ながうじ」と呼ばれていました。
彼はこの地で、大島紬の染色工として5年働いてお金を貯めたら、次の3年は画業に専念するという生活を試みました。さらに絵を描く体力をつけるため、毎朝、自宅近くの本茶峠の山道を片道6キロも歩く。その道すがら、植物や蝶、小鳥を観察して作品に落とし込んだ。生活様式そのものが絵を描くことに繋がっていました。
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