画期的なファイル共有ソフト「Winny」を開発し、世界を驚かせたプログラマーの金子勇(1970〜2013)は、2004年、著作権法違反幇助の疑いで逮捕された。7年3カ月に及ぶ裁判の末に無罪を勝ち取ったが、確定からわずか1年半後、急性心筋梗塞のため42歳で急逝する。映画『Winny』(2023年公開)で金子を演じた俳優の東出昌大氏が、役作りの取材で見つけた金子の素顔を綴る。

映画『Winny』で金子勇さんを演じるにあたり、生前の彼を知る人々にインタビューした。さらに、彼のお姉様、そしてWinny事件を担当した弁護士の壇俊光さんとともに、栃木県にある生家跡を訪れた。
いや、正確には「訪れることができた」だ。いくら役作りとはいえ、生前のその人を快く思っていない人にはご協力いただけないし、関係者に連絡がつかないこともある。その点、金子さんは特別だった。快諾の理由は話を聞けば分かった。彼の話をする時、誰もが目尻を下げ、時にはプフッと吹き出す。かわいい我が子を語る親のような声音になる人さえいた。そして「生前の彼を知る人で悪く言う人はいません」と皆が口を揃えた。
人間が善悪の二つで割り切れないことをよく知るはずの大学教授や弁護士たちが、そんなふうにハッキリと言い切る。世間擦れした私は、そんな妖精のような人物が本当にいたのだろうかと不思議に思った。
金子勇は栃木県の田園地帯に生まれた。田んぼばかりが青々と目立ち、遠くに地べたがちょっと腫れたような小山が点在する地域だ。クリーニング店を営む両親は素朴で実直、姉は物静かで可憐。そんな穏やかな家風がしみ込んだのか、金子少年も鷹揚な性格だったそうだ。
子供たちが勉学を強いられることはなかったが、妨げられることもなかった。「読みたい本は買ってくれる両親だった。寒い冬に机に向かって本を読んでいると足元が冷えるからと、電気ストーブを買ってくれたこともある」と語るお姉様の口ぶりから察するに、蛍の光、窓の雪とまでは言わないが、学習塾や家庭教師にジャブジャブとお金を注ぎ込むような家庭ではなかったのだろう。
そんな生い立ちの金子少年はなぜかコンピューターに取り憑かれた。「どこでこの子はコンピューターを知ったのだろう」と、機械に縁遠い家族は不思議がったそうだ。
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