なぜ不祥事は起きるのか。“強制労働省”の謎を解く
時計の針を昨年に戻したい。
12月28日は、西日本新聞東京支社の永松英一郎(39)にとって「御用納め」のはずだった。
取材先への挨拶回りをほどほどに切り上げ、明るいうちから同僚と一緒に歓楽街に繰り出すつもりが、昼過ぎに出た朝日新聞夕刊の一面記事のおかげで年末気分は吹き飛んだ。
〈勤労統計 全数調査怠る/厚労省都内は約1/3を抽出〉
記事は、厚生労働省が全国の事業所の賃金や労働時間などを調べ、月例で公表している「毎月勤労統計(マイキン)」が、不正な調査手法で行われていたことを伝えていた。永松は迷わず厚労省が入る高層ビルに走った。
だが、ようやくつかまえた高級官僚は何食わぬ顔をしていた。身内の不祥事に対して感想めいた持論を説いては、他人事のように振る舞う。
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source : 文藝春秋 2019年3月号