50年後“AI人間”が生まれる

AIと日本人

松尾 豊 東京大学大学院工学系研究科教授
井上 智洋 駒澤大学准教授
ライフ 社会 テクノロジー

最前線の研究者たちによるタブーなき未来予測

コミュニケーションの相手がAIになる ※画像はイメージ ©iStock

 ディープラーニング(深層学習)技術の発見により、第3次AIブームが巻き起こっている。AI自身が膨大な量の画像をデータとして取り込み、学習、出力を繰り返していくことで、人間が対象の特徴を定義せずとも、AI自ら特徴を検出し、何が映っているかを判断する「画像認識」が可能になったのだ。研究の第一人者の東京大学特任准教授・松尾豊氏は、「産業革命以来、初めて機械が“眼”を獲得した」と語る。
 自動運転・画像診断などの技術革新が進み、今後さらに、人間にしかできなかった仕事をAIによって機械化、自動化することが可能になる。その一方、人間が仕事を奪われるのでは、との恐れも叫ばれている。
 AIの最前線で何が起きているのか、世界における日本の立ち位置はどうか、生活をどう変えるのか。松尾氏に加え、AIに造詣が深く2014年にドワンゴ人工知能研究所を設立したドワンゴCTO・川上量生氏、AIが経済に及ぼす影響を研究する駒澤大学経済学部准教授・井上智洋氏が語った。

出遅れてしまった日本

 井上 2016年、囲碁AIの「アルファ碁」がトップ棋士を破ったことで、日本でも「ディープラーニング」という言葉が知られるようになりました。AIブームが巻き起こり同年の流行語大賞には「AI」がノミネートされました。ブームの火付け役の松尾先生は、日本の研究の現状をどうご覧になっていますか。

 松尾 いまでこそディープラーニング技術の画期性が浸透してきましたが、実は3年前くらいまで「本当に凄いんです!」と力説してもなかなか興味を持ってもらえなかった。本当はディープラーニング技術を使った研究分野でスタートダッシュを決めたかったのですが、日本ではそれが上手くいかなかったのです。

 井上 なぜスタートダッシュに失敗したのでしょうか。

 松尾 力を入れるべき分野を絞りきれなかったのが原因です。AIという言葉はいわゆる“スーツケースワード”で、便利なので何でもかんでも「AI、AI」とマーケティングに使われるわりに、きちんと意味が理解されていない。日本でいまAIの意味で使われているのが、(1)IT、(2)ビッグデータの活用、そして(3)ディープラーニングです。しかし実際、技術的に大きなイノベーションが起こっているのは(3)のディープラーニングなのです。

 もちろんITやビッグデータも重要ですが、言うならば昔から重要でした。「いま」投資すべきは何よりディープラーニングであるところ、日本では3つ全てをひっくるめて、あるいは混同して「AI」として推進しようとしてしまったのです。

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source : 文藝春秋 2019年3月号

genre : ライフ 社会 テクノロジー