戦後75年の同盟イノベーション先月、米海軍はロナルド・レーガンとニミッツの原子力空母2隻を中心とする空母打撃群を南シナ海に派遣し、演習を行った。ポンペオ米国務長官は「世界は中国が南シナ海を自らの海洋帝国として扱うのを認めない」との声明を出した。
新型コロナウイルスが蔓延し始めた今年3月、米空母セオドア・ルーズベルトの乗員が感染し、最終的に4800人のうち1000人以上が感染した。セオドア・ルーズベルトはグアムに寄港、2か月近くそこに停泊することを余儀なくされた。東シナ海から南シナ海にかけて「力の空白」が生じた。これを機に、中国の「海洋への戦略的意思」攻勢はすさまじさを増した。4月、南シナ海の広大な海域に一方的に行政区を設定した。6月、中国軍機が4日連続で台湾の防空識別圏に侵入した。中国は台湾海峡に空母「遼寧」を派遣、演習をした。7月23日、中国海警局の船による沖縄県の尖閣諸島周辺の接続水域への進入が連続100日を超えた。
米国は、そうした中国の攻勢を座視しないとの姿勢を鮮明にしつつある。対中抑止力を明確に示す必要を米国は感じている。
オバマ政権時代、中国の海洋戦略に関して、尖閣諸島の領有権問題を抱える日本と、グローバル・イシュー、とくに気候変動で新たな対中関与政策を追求する米国との波長が時として合わずに、対中脅威感にギャップが生まれた。なかでも、中国がフィリピンのスカボロー礁を一方的に占拠したのに対して、手をこまねいているだけのオバマ政権の姿を見て、日本の為政者の脳裏に中国の尖閣諸島上陸による施政権の既成事実化というシナリオがよぎった。
オバマ政権も徐々に対中警戒感を強め、日本の施政権下にある尖閣諸島に関しては防衛義務の安保条約第5条適用を大統領のレベルで宣言するなど同盟強化に努めた。それでも日本側の不安感はぬぐえなかった。
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source : 文藝春秋 2020年9月号