女優の広瀬アリス(25)は芸能界随一の漫画好きだ。自宅には1000冊を超える漫画本を収納する漫画部屋があるほどで、ロケには数十冊の単行本を持っていくこともあるという。
恋愛漫画には興味がなく、好きな漫画は「人間の悪いところもちゃんと描いていて、ダークで人間臭いもの、独自の世界観があるもの。友達には“グロい”のが好きだと思われている」と笑う。そんな広瀬さんが今、注目している漫画とは——。
広瀬アリス氏(女優)
殺したはずの夫が普通に家に帰ってくる
おすすめの漫画はその時々で変わるんですけど、今、楽しみな漫画は、と聞かれたら『私の夫は冷凍庫に眠っている』(原作 八月美咲・漫画 高良百)かな。
漫画のアプリで連載しているのを見つけて、単行本を買いました。この作家さんの作品を読むのは初めてです。
私は漫画を作家さんじゃなくて作品で選びます。圧倒的に作品至上主義です。好きな作品の作者の他の作品を同じ作者だからという理由だけで読みたいとは思いません。作品が私にとって面白そうかどうかが大事なので。
漫画を買う時はジャケ買い(表紙を気に入って買うこと)が多いんですが、この本もタイトル、表紙がいいですよね。青白い顔の女性が茫然としてへたり込んでいて、彼女が寄りかかっているアイスクリームの冷凍庫からは結婚指輪をした男性の腕が出ている。で、タイトルが『私の夫は冷凍庫に眠っている』ですよ。何が起こったか気になるじゃないですか。
内容は、結婚してからずっと夫のDVに耐えてきた女性が、ある日、ついに夫を殺してしまうんです。それで死体をおじいちゃんが趣味で集めて物置に置いていた冷凍庫に隠すんですが、そうしたら次の日に殺したはずの夫が普通に家に帰ってくる――すごい展開じゃないですか?
普通ならDVを受けた女性が夫を憎んで憎んで、ついに夫を殺して、ようやく解放されて自由になった! っていう感じで終わると思うんですけど、そこから話が始まる。
私にとって漫画は、最初に何が起こるかという“つかみ”が重要なんです。『多重人格探偵サイコ』という作品も好きなんですけど、付き合っていた彼女が両足両腕を全部切断されて宅配便で送られてくる。そういうのがあると心を掴まれちゃうから、『私の夫は~』もつかみでぐっときちゃいましたね。
日常のなかにある違和感っていうのが凄く好きです。『私の夫は~』の主人公の女性はすごく普通なのに、夫を殺したことでどんどん日常が壊れて、彼女の思考もどんどんおかしくなっていくんです。
DVの旦那さんもそうですが、他に登場するキャラもまともな人が出てこない。そんな状況で彼女がどう崩れていくのかが楽しみなんです。
実写化とかしたら、なんかヤバそうですよね。ゾワゾワしそう。
でも、私は漫画は漫画であってほしいタイプです。この作品には原作の小説があるんですけど、やっぱり漫画で読みたいですね。
漫画を読むと、登場人物の表情とか動き、会話が映像として出てきます。コマが映像として流れるような感覚。自分で色づけしてキャラクターを作っていくのが好きで、そこに漫画の魅力を感じています。映画だと完成された世界で、小説だと文字だけで手がかりが少ない。漫画は頭の中で映像化して自分独自の世界を作りながら読んでいく感じです。
バッドエンドでいい
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