政権交代のたびに政治任用者が大挙して政権入りする米国はどこにもまして「人が政策(Personnel is policy)」である。バイデン政権ではどんな人が、外交・安保政策、なかでもアジア政策をつくるのか。
バイデン大統領
政策全般の理念と方向の筋立てを書き、政策の各省調整を行う大統領補佐官(NSA=国家安全保障担当)には44歳のジェイク・サリバンが就任した。オバマ政権(2期)時代、バイデン副大統領のNSAを務めた。イランとの核合意をまとめ上げた交渉力には定評がある。米国が中国政策で揺れ動く中、幻想ゼロの対中外交の必要性を痛感した。6年前、私たちのシンクタンク(アジア・パシフィック・イニシアティブ=API)は彼を日本に招き、日本政府の要路と意見交換の場を設けたことがある。サリバンが「中国観をめぐっては米国では世代間で違いがある。年配層に比べて自分たちの世代は中国に対して冷めており、より現実主義的なアプローチを志向している」と語っていたのを思い出す。
ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)においてアジア政策でサリバンを支えるのがカート・キャンベルである。今回、新設のインド太平洋政策調整官に就任した。キャンベルは米国きっての戦略家であり、アジアに深い人脈を築いてきた。オバマ政権(1期)では国務次官補としてアジア重視のリバランス政策を考案した。ただ、中国の南シナ海攻勢や地経学的攻勢に押されて、この政策を十分に展開できなかった挫折感を抱いている。
サリバンとキャンベルは、フォーリン・アフェアーズ誌の論文で、これまでの対中関与政策が「失敗」だったことを認めた上で、中国に「競争と共存」の両様作戦で臨むべきだと主張している。「共存とは、問題を解決するというより条件を管理するものとしての競争を受け入れること」と定義するのだ。競争的共存と言ってもよい。
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source : 文藝春秋 2021年3月号