孤独な少年の、帰る先なき、上昇と下降の永劫の循環運動
男の子は宇宙に飛翔する。1人乗りの屹立したロケットで。フロイト主義で簡単に解釈できる、男の子の欲望の1960年代的かたちだ。61年にガガーリンが1人乗りのボストーク1号で宇宙に行き、69年には3人乗りだけれどアポロ11号が月面に到達した。
日本ではその時代に『ぼくのクレヨン』という童謡も生まれたっけ。「おひさまはあか、そらはあお」。そんな日に鼠色のロケットが発射される。乗り組むのは「ぼく」ひとり。「てをふるママはたちまちまめつぶ」。ところが威勢の良かった「ぼく」はすぐに悟る。「ひろいうちゅうによるがくる」。何もない。虚無だ。真っ黒だ。絶対の孤独だ。ここで何が出来るというのか。助けてママ! 宇宙船は反転するだろう。上昇から下降へ。でも、さっき豆粒になったママはまだ待ってくれているのか。
そんな『ぼくのクレヨン』を歌いつつ本書を読んだ。英国のロック歌手、デヴィッド・ボウイは47年生まれ。60年に13歳。60年代の子供に違いない。65年からボウイを芸名とした。綴りはBOWIE。BOYに通じる。生涯、一男の子。18歳の年にそう宣言したわけだろう。
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source : 文藝春秋 2021年6月号