米国を公式訪問した菅義偉首相がワシントンで4月16日(日本時間17日)、ジョセフ・バイデン大統領と会談した。同日発表された共同声明では、国際秩序を一方的に変更しようとする中国を牽制する以下の内容が含まれた。
〈日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。日米両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する。日米両国は、中国との率直な対話の重要性を認識するとともに、直接懸念を伝達していく意図を改めて表明し、共通の利益を有する分野に関し、中国と協働する必要性を認識した〉(外務省HP4月16日付)
北京大学国際関係学院の帰泳濤副教授は、〈台湾は中国にとって特に重要な「核心的利益」だ。日米の首脳共同声明に「台湾海峡の平和と安定の重要性」を明記したことは中国にとっては内政干渉で、反発は必至だ。近年は「友好」に向かっていた中国の対日政策は、転換するかどうかの瀬戸際を迎えることになるだろう〉(朝日新聞デジタル、4月18日)と述べるが、感情的対応だ。
細かいことのように見えるが、共同声明は「台湾の平和と安定」ではなく「台湾海峡の平和と安定」と述べている。海峡の安全を保障することは、中国も参加している国連海洋法条約に合致している。さらに日本政府が常に強調している「両岸問題の平和的解決を促す」も明記されている。中国に付け込まれる隙を与えないように日本は細心の注意を払っている。また、ウイグル人の人権問題に関しても、日本は中国に対する制裁を行わない姿勢を貫いている。日米同盟を堅持すると共に中国とも安定的関係を続けるという菅政権のプラグマティズムが反映された共同声明だ。
日本外交の基本は日米同盟だ。もっとも同盟関係は、常に手当をしなくては綻びが生じ、弱体化してしまう。米国ではトランプ政権からバイデン政権への転換という激変が起きているが、首相官邸と外務省が連携し、水面下でさまざまな努力を続けたことが、今回の日米首脳会談の成功に結びついた。
海兵隊を見くびった陸軍
この機会に、日米関係が決裂した80年前の出来事から学び直してみたい。
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source : 文藝春秋 2021年6月号