3月から東京五輪組織委員会関係者の取材を続けてきたという長野智子さん。組織委内部の空気と世論との壮大なギャップと、幹部へ不満を抱えている若い世代の声を明かす。
【選んだニュース】「五輪に観客」強気の政府 ワクチン接種拡大で勢いづく(6月9日、朝日新聞)
この原稿を書いている6月中旬時点でも、テレビやSNSでは依然「五輪を本当に開催するのか」という議論が行われている。これだけ国民に我慢を強いているコロナ禍にあって優先すべきは感染予防であり、感染拡大のリスクを冒す五輪をなぜやるのか、優先すべきは人命ではないかといった議論である。
私は3月から東京五輪組織委員会関係者の取材をしているのだが、毎度驚くのは組織委内部の空気と世論との壮大なるギャップだ。世論調査で「中止」「再延期」と慎重意見を合わせると8割以上を占めるさなかにあっても、組織委の現場レベルで、「中止」や「延期」の言葉がこれまで出たことは一切なく、「開催しないことのほうが異常事態」という姿勢は変わらないのだという。
長野智子さん
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source : 文藝春秋 2021年8月号