サシャ・バロン・コーエン
©AF Archive/20th Centu/Mary Evans Picture Library/共同通信イメージズ
『ボラット』(2006。異様に長い副題は省略する)を初めて見たとき、私は笑い転げた。腹を抱え、身をよじり、試写室の椅子から落ちそうになった。
そのときはさすがに、俺は莫迦じゃないかと思った。椅子から落ちかけることはないだろうと少しだけ反省したら、もっと莫迦な人がいたことが判明した。
正体を明かすと、畏れ多くも、世界一強く世界一美しいと評されるシャーリーズ・セロン様だ。セロンは、『ボラット』を見て何度も激しくのけぞり、頸椎椎間板ヘルニアを発症して5日間の入院加療を余儀なくされたらしい。手術は受けずにすんだようだが。
ボラット・サグディエフ(サシャ・バロン・コーエン)は、カザフスタンのTVリポーターだ。故郷の村(ルーマニアに実在する村で撮影され、あとで訴えられた)は度外れに貧しく、信じがたいほど不潔で、限りなく粗野だ。
政府の指令を受けたボラットは、そんな村を発ってアメリカ合衆国(US&Aと思い込んでいる)へと向かう。かの地の文化を学習し、故国カザフスタンにその成果を持ち帰るのが目的だ。同行するのはTVプロデューサーのアザマット(ケン・デイヴィシャン)。
ただし、ボラットは大莫迦者だ。性欲が極端に強く、ユダヤ人を恐れ、女性を蔑視し、ゲイを毛嫌いしている。おや、アメリカにも、そんな男が大勢いそうだ。これは一体、どんな摩擦が起こるのか。
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source : 文藝春秋 2021年8月号