先づは自己紹介の口上から。“ワタクシ、生れも育ちも東宝怪獣映画です。小一で『三大怪獣』にずっぽりハマり、姓はみうら、名はじゅん。人呼んでカイジュウのじゅんと発します”
で、現在、63歳。シルバー料金の恩恵に与かり、先日『ゴジラvsコング』を観て参りました。コロナ禍での延期上映だったので期待は高まるばかり。いつもならプラッと映画館に出掛け、その場でチケットを買うのですが、今回は前日にケータイから予約する方法を初めて知人に教わり、余裕たっぷりに行ったのでございます。
しかし、売店でパンフを買う際、そのタイトルが咄嗟に出てこなくて一瞬、戸惑いました。それは名前の順番。
かつて東宝怪獣映画のそれは『キングコング対ゴジラ』( ,62)だったからです。僕は口上で申し上げた通り怪獣映画の初見ロールは『三大怪獣 地球最大の決戦』( ,64)で、キンゴジもモスゴジもリアルタイム上映には間に合っていません。
ちなみにモスゴジとは『モスラ対ゴジラ』( ,64)の略称で僕の中で第2次怪獣ブームが到来した大学時代には既に仲間内ではそう呼んでおりました。
後に『ゴジラVSモスラ』( ,92)という作品も公開されることになるのですが、初期はゴジも先輩であるキンを立てたり、敢えて後輩のモスに花を持たせようとその名前の順番を考えたもの。ゴジはそんな気遣いができる怪獣だからこそキング・オブ・モンスターと呼ばれるのです。
しかし、今回はどうでしょう。日本の謙遜文化はどこへやら。特撮の神様・円谷英二氏が多大なる影響を受けた米映画『キングコング』( ,33)が、あろうことかキング抜きで、しかも後者に回っているではあーりませんか。『ゴジラvsコング』では“ゴジコン”。略してもゼネコンみたいで何とも締まりません。やはり、ゴジは下手の方が断然収りがいいと思うのですがねぇ。
仕方なく売店では「ゴジラのパンフ」と言いましたが、そこに載っていた写真は狛犬のようでした。前作と言っていいんでしょうか? 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』( ,19)もそうでしたし、ギャレス・エドワーズ監督作『ゴジラ GODZILLA』( ,14)から、米ゴジラのルックスはどうもしっくりきませんでした。
比較しようなんて思ってもいませんが、キンゴジのそれはキツネ顔、モスゴジは何よりその太いマユ毛にカッコ良さがあったものです。だからこそ、今でもそれらは仲間内で人気の高いゴジ顔なんです。
「どうしてアメリカさんはそこを分ってくれないかねぇ」
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source : 文藝春秋 2021年9月号