三浦雅士(みうらまさし・文芸評論家)
「言語の始原が詩であるなら、動作の始まりは舞踊である」
月刊誌「ユリイカ」「現代思想」で編集長を務め、劇作家の寺山修司や詩人の大岡信らと親交を深めていた三浦雅士(74)。80年代から文芸評論家として活躍するが、ニューヨークで偶然観たダンス公演をきっかけに、舞台芸術の虜となった。今や舞踊批評家としての顔も持つ。
「人間は、四つ這いから二足歩行で視線が高くなり、自分や他人の身体を認識するようになった。たとえば、これが手なんだ、どこまで伸びるだろうと。それを確かめられるのが舞踊。自らの意思で伸びやかに体を動かすことが、言葉以前の、人間の本能だと気づいてしまったんです」
農耕民族と狩猟民族の踊りの相違や、産業革命による踊り手の変遷など、舞踊だけにとどまらない話は誰もが聞き入ってしまう。寸暇を惜しんで劇場へ足を運ぶ姿は、自身も闘い続けるダンサーのようだ。
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source : 文藝春秋 2021年10月号