ジャーナリストの大西康之さんが、世界で活躍する“破格の経営者たち”を描く人物評伝シリーズ。今月紹介するのは、ヒー・シャオペン(He Xiaopeng、小鵬汽車創業者)です。
ヒー・シャオペン ©時事通信
「ローマは一日にしてならず。(ネット大手の)アリババ、テンセント、(通信機器大手の)ファーウェイも数々の苦難を経て今日がある。今日は一番悪い日で、明日が新たなスタート。ある節目だけを捉えて結論を出すべきではない」
2019年10月、中国三大EV(電気自動車)メーカーの一つ小鵬汽車の創業者CEO何小鵬は中国版ツイッターの微博(ウェイボー)でこう呟いた。
この日、何小鵬の盟友である李斌(ウィリアム・ビン・リー)がCEOを務める上海蔚来汽車(NIO)が4~6月期決算で32億8577万元(約500億円)の最終損失を計上し、業績改善のためのリストラを発表した。
「NIOのCEOは19年の最も悲惨な人物」
ネットはNIOや李に対して否定的な記事で溢れたが、何は冒頭のコメントで李にエールを送った。何はそのコメントに一枚の写真とイラストを添付した。写真は中国三大EVメーカーの創業者である李、何、理想汽車CEOの李想が肩を組んだもの。イラストは三国志の英雄、劉備、関羽、張飛が、最大のライバル呂布に力を合わせて立ち向かう「三英戦呂布」と呼ばれる構図である。
先月、この欄で紹介した通り、中国では政府の号令一下、急速にEVの普及が進んでいる。しかしその中国市場で最も売れているEVは米国の「テスラ」。世界市場で見てもテスラの存在は圧倒的だ。一方、官製EVブームに乗って雨後の筍の如く設立された中国の新興メーカーはバタバタと倒れている。その中で生き残ったのがNIO、理想汽車、小鵬汽車の3社である。
「中国のテスラ」と呼ばれるNIOは、本家テスラ追撃の資金を調達するため、2018年にニューヨーク証券取引所に上場し、理想汽車が20年7月、同年8月には小鵬も米市場に上場した。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2021年12月号