ニデック、日産、損保ジャパン、フジテレビ……数多の不祥事にも事なかれ主義を貫いてきた
■連載「大成建設の天皇、大いに語る」
第2回 安倍外交団で見た世界一悲惨な建設現場・ウラジオストク
第5回 柏崎刈羽原発「再稼働工作」の内幕
最終回 ←今回
大成建設で16年もの長きにわたって社長、会長を務めてきた山内隆司は、今年6月に傘寿を迎える。突如、名誉顧問という役職を解かれ、古巣の大成建設ならびに社長の相川善郎(68)を相手取って昨年4月に地位回復目的の訴訟を起こした。自ら社長に据えたかつての部下を訴える異例の裁判から1年近くが経過する。そろそろ決着が見えてきたようだ。

「当初に思っていたより少し遅れ気味ではありますが、裁判所としては新年度の人事異動もあるし、結論を出そうとしているように感じます。私自身、会社にいていろんな業務で裁判を闘ってきましたが、当事者として訴訟の原告になった経験はありません。
当方の主張は、名誉顧問の解職が名誉棄損にあたり、それを理由に、復職を要求しているわけです。けれど正直に言えば、会社側もこちらの要求を呑むのは難しいでしょう。そこを踏まえ、裁判所からは『金銭的な解決方法は考えられますか』と問い合わせがあります。そうした雰囲気はありますが、裁判の先行きは見通せません。裁判所が当方の主張をどこまで認めてくれるか、といったところでしょうか」
山内は第一次安倍晋三政権後半の2007年4月に社長に就任し、民主党政権を経て第二次安倍政権時代の15年4月に会長に昇格する。その後23年まで大成建設の経営の舵を握った大半が、自民党一強政権の時期に重なる。山内はこの間、大成建設をゼネコン業界トップに押し上げ、相川を社長に据えたが、一転、師弟対決となったわけだ。
本連載では、くだんの訴訟をきっかけに日本の企業社会を取り巻く課題についてさまざまな角度から当人に尋ねてきた。主要テーマの一つが国の政策とビジネスとの関係で、もう一つは山内が裁判で繰り返し力説してきたガバナンス(企業統治)だ。連載最終回はまず、企業ガバナンスについて聞いた。
相川社長の支離滅裂な釈明
――大成建設のガバナンス欠如について、相川社長体制のどこを問題視してきたのか。
「裁判は今から2年前の2024年6月の株主総会における質問状が発端です。私が株主総会で指摘した要旨の一番目は業績でした。相川君は歴代社長の達成してきた業界トップの『決算利益額』と『株式時価総額』を一度も達成していない。葉山(莞児)さんや私、私の後任の村田(誉之)君が達成してきた業界トップという大成建設にとって必達の二つの経営指標をいつまでに達成できるのか。そこを明示してほしい、と株主総会で質してきたのですが、いまだ返事がありません。
前にも言いましたが、09年に海外事業に失敗して赤字を出した当時の葉山会長は、平島(治)相談役に諫められて会長を辞任しました。私は相川君の任命責任者としてそれに倣い、厳しいことを言ってきました。だが、彼は耳を貸さず、業績不振は今もって改善されていません。清水と大成はずっと大手ゼネコンの負け組だと言われ続けてきました。
それに加えて札幌市の高層ビル建築における施工不良やデータ改ざん、世田谷区庁舎の建て替え工事延期と立て続けに発生した建設トラブルの対処です。相川君はトラブルのあった2023年3月の取締役会で『知らなかった』と言い放っています。部下の建築本部長を辞任させ、自らは役員報酬を返上しただけで済ませてしまっているのです。世田谷区役所の建設工事では、発注者の区から賠償を請求された挙句、追加のペナルティまで食らっています」

世田谷区が新庁舎整備事業の工期延伸を巡り、二度目の損害賠償請求を決めたのは2025年11月だ。区は人件費や施設修繕費など3億8646万円の24年3月の請求に加え、新たに調査委員会の会議録作成費など89万円の請求を決定した。
「まるでトラブル処理がなっていません。施工不良とデータ改ざんを起こして恥ずかしい思いをしたのに、正す姿勢がまったく見えないから、第三者の有識者会議の設置を怠って追加のペナルティなんて話になる。明らかなミスが続いています。
しかも札幌の不祥事では、会社の発表前に社員が大成株を売り抜けるインサイダー事件まで起きている。これらは2024年の株主総会のあとの出来事ですけれど、それだけ会社の内部統制のおかしさを象徴しています。結局のところ、度重なる不祥事を引き起こしながら、ぜんぜん歯止めが利いてないのです。
私はすでに2年前の株主総会から、相川君たちに責任の明確化と再発防止策を示すよう求めてきました。けれど、相川君は私の事前質問に回答せずに議事を進行し、やむなく私が異議を申し立てた末にようやく回答が出てきた。大成建設は今度の訴訟で相川君が釈明しているその動画を裁判所に提出しました。それを見ると相川君はしどろもどろで、何を言いたいのか意味不明。支離滅裂なのです」
不祥事の時こそ働くべし
山内が古巣を裁判に訴える最大のテーマが、企業統治にかかわる監査やトラブル処理のあり方だ。
――日本の大企業はたいてい社外取締役や監査役を置き、何かことがあればそこをチェックする建前になっているが……。
「残念ながら日本の会社制度では、その社外取締役や監査役が機能していません。昨今、世間を賑わせてきた『ニデック』や『フジ・メディア・ホールディングス(FMH)』、『日産自動車』、さらには最近話題になっている『プルデンシャル生命』など、数え上げればきりがない。たとえばニデックは創業者の永守(重信)CEO時代の不適切会計です。ワンマン体制と言われたその時代にあっても、立派な社外取締役や監査役がいた。それが何の役にも立っていない。自動車修理の『ビッグモーター』事件でも、不祥事にかかわった『損保ジャパン』の自浄能力が働かず、迷走しました」
モーターメーカーのニデックは創業者の永守によるM&A(企業買収)戦略で急成長したとされた。だが、中国の子会社などを巡る不正経理が浮かび、永守は25年12月に代表取締役を辞任。非常勤の名誉会長に退いたが、それも2月下旬に辞めた。ニデックはときを同じくして工作機械メーカー「牧野フライス製作所」の買収を巡るインサイダー取引などでも社内が揺れ続けてきた。
また、故意に自動車に傷をつけ、保険金請求の対象となる修理費用を水増ししていたビッグモーター事件では、損保業界大手の損保ジャパン問題も浮上した。ビッグモーターのでっち上げてきた自動車修理を損保が黙認し、双方が一蓮托生となって業績アップに協力してきた実態が明るみに出る。
「金融庁が損保ジャパンを問題視したのですが、損保ジャパンの櫻田(謙悟)さんは、当初、何食わぬ顔で会長のまま居座り、引責辞任するまでずいぶん時間がかかった。櫻田会長は経済三団体の一つである経済同友会の代表幹事をやっていて、それも辞めようとしなかった。財界のトップのいる会社でさえ、金融庁に詰め腹を切らされるまで何もしなかったわけです。
むろん損保ジャパンにも錚々たる社外取締役や有名な監査役がいました。けれど、彼らは櫻田さんの言いなりになるイエスマンばかり。そこが大成建設を含めた他の大多数の日本企業と共通します。社外取締役がきちんと機能していないから、こういう不祥事に対応できないのです。
会社が順調にうまくいってるあいだは『良きに計らえ』で、彼らも『立派な決算で結構ですね』と答えるだけで済みますが、業績が悪くなったり、不祥事が起きたときにはそうはいきません。本来はそのときに働くのが社外取締役や監査役です。しかし、実態は事なかれ主義に終始するばかりで、何もしません」
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