「ありがち」の対極にある青春恋愛小説
語り手のフランシスはトリニティ・カレッジに通う21歳の女性で、詩作にすぐれている。高校時代の同性の恋人、ボビーと別れてはいるものの今も親密で、2人でスポークン・ワードのパフォーマンスをしている。その活動によって知り合った30代の夫婦、俳優のニックとジャーナリストのメリッサと親交を持つ。顔立ちのうつくしいニックとフランシスは恋に落ち、ボビーはメリッサに惹かれていく。
あらすじにすると、ありがちな青春恋愛小説みたいで、そのことに私自身がびっくりしてしまう。この小説は「ありがち」の対極にある。人や関係の描きかたがユニークで新鮮である。くわえて、従来の世界に切れ目を入れて、その奥をのぞかせるような鋭利でうつくしい文章に、幾度もはっとさせられる。
タイトルどおり、フランシスはつねにだれか——ボビーと、ニックと、メリッサと、バイト仲間と、母親と、自分自身と——会話している。その言葉が痛いくらいむき出しのこともあれば、意味をなさない暗号みたいなときもあり、気持ちとまったく接点のない、だれかを傷つけるためだけの言葉の羅列のときもある。
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source : 文藝春秋 2021年12月号