サリー・ルーニー著 山崎まどか訳「カンバセーションズ・ウィズ・フレンズ」

文春BOOK倶楽部

角田 光代 作家
エンタメ 読書

「ありがち」の対極にある青春恋愛小説

 語り手のフランシスはトリニティ・カレッジに通う21歳の女性で、詩作にすぐれている。高校時代の同性の恋人、ボビーと別れてはいるものの今も親密で、2人でスポークン・ワードのパフォーマンスをしている。その活動によって知り合った30代の夫婦、俳優のニックとジャーナリストのメリッサと親交を持つ。顔立ちのうつくしいニックとフランシスは恋に落ち、ボビーはメリッサに惹かれていく。

 あらすじにすると、ありがちな青春恋愛小説みたいで、そのことに私自身がびっくりしてしまう。この小説は「ありがち」の対極にある。人や関係の描きかたがユニークで新鮮である。くわえて、従来の世界に切れ目を入れて、その奥をのぞかせるような鋭利でうつくしい文章に、幾度もはっとさせられる。

 タイトルどおり、フランシスはつねにだれか——ボビーと、ニックと、メリッサと、バイト仲間と、母親と、自分自身と——会話している。その言葉が痛いくらいむき出しのこともあれば、意味をなさない暗号みたいなときもあり、気持ちとまったく接点のない、だれかを傷つけるためだけの言葉の羅列のときもある。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2021年12月号

genre : エンタメ 読書