列車と日本史の交差点
鉄道は、歴史の地層の上を走っている——原武史さんの書くものを読むと、いつもそう実感する。
地面の上を水平方向に走る鉄道だが、政治思想史が専門で「鉄学者」としても知られる原さんの手にかかると、垂直方向に過去へとさかのぼる旅にいざなわれる。
本書は、鉄道にかかわるさまざまなトピックから、近現代史を浮かび上がらせたコラム集。朝日新聞の土曜別刷り「be」に同タイトルで現在も続いている連載の、今年5月までの分をまとめたものだ。
連載が始まって間もない2019年10月、即位の礼が行われた。「移動する天皇」と題された第1章は、皇室と鉄道がテーマとなっている。
即位の礼の中心となる「即位礼正殿の儀」が行われたのは、皇居の宮殿松の間、つまり東京である。だが、明治中期に制定された旧皇室典範では、即位の礼と大嘗祭は京都で行われなければならないとされていた。大正天皇も昭和天皇も東京から京都まで御召列車に乗って移動したが、その際、三種の神器も同じ列車で運ばれた。大正天皇の即位の礼に合わせて作られた鉄道史上唯一の「神」を乗せる車両(そのようなものがあったとは!)の話がまず面白い。
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source : 文藝春秋 2021年11月号