今年のお題はなかなか難儀である。気になる本はたくさんあるが、個人的な思い入れの深いものを選んだ。
『無縁・公界・楽』は、支配と隷属が基本原則であるかに見えていた日本の中世社会の中に、自由な空間、無縁の原理を見出した。1978年の刊行で、その翌年に大学に入って歴史学研究をかじり始めた私は、いろいろな先生が興奮気味に、この本に言及するのを聞いた。一方で、本書はあくまでも高度経済成長からバブルに向かう時代の産物だったと思う。今日の私たちにとって「自由」は全面的に肯定できる概念ではなく、保護を受けられない不安と表裏一体のものだ。「網野善彦」は、日本中世史という分野の知名度を飛躍的に高めたが、それに続く世代に大きな課題を残した。網野史学を超えたところに広がるはずの風景は、まだ焦点を結んでいない。
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source : 文藝春秋 2022年1月号