いつも誰かと一緒にいたがる人でした
「先生」がいちばんお気に入りの場所は、代々木アトリエでした。晩年もっとも多くの時間を過ごしたのも、このアトリエだと思います。
劇団四季の創立10年目、1965年に建てられたこの建物は、今は1階部分が事務所、2階部分が稽古場という造りになっています。
ちょうど学校のプールの大きさくらいの稽古場は、狭すぎず、広すぎない。もう50年以上前の建物ですから、当初、木製だった床には黒いリノリウムが敷き詰められ、壁に張りつけられた板はすっかり年季が入っています。
その空間のちょうど真ん中に、ゆったりとした革製のリクライニングチェアがどーんと置かれています。先生はいつもそこに座って俳優にダメ出しをしていました。
劇団四季の名だたる先輩方は、ここで先生からたっぷりとしごかれました。最近は物を投げたりすることはありませんでしたが、昔はスリッパを投げつけたり、読み込みの足りない俳優の台本を破り捨てたり、灰皿が飛ぶこともあったようです(笑)。
この稽古場には、役者たちの演技に対する悩み、喜び、苦労など、様々な感情が入り混じった汗が、何十年にもわたって染み込んでいるのです。
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source : 文藝春秋 2018年09月号