イタリアでは総選挙は3月始めに行われたのにその後3カ月もスッタモンダがつづいてしまったのは、過半数を獲得できた党がなかったからである。それでも6月に入ってようやく政府が成立し、大統領の承認も得て正式にスタートした。
出来たばかりのイタリアの新政府を日本に置き換えてみれば、次のようになる。
総選挙では比較第一党にしろ第一党にはなった立憲民主党と、総選挙はともに闘ったものの首相には不満な自民党の一派が連立して出来たような政府、である。
南イタリアからの票が集中したことで今回始めて第一党に踊り出た「五ツ星(チンクエ・ステツレ)」の得票率は33パーセント。一方の「同盟(レーガ)」は、北イタリアの支持を集めて17パーセント。この2つを合わせると、国会での議席数ならば、カツカツにしても過半数は越えるらしい。しかも両党とも、自党の議員たちには党議に反した投票を許していない。こうなると、2023年までの5年間の任期いっぱいこの政府でつづく可能性さえある。だが、この2党が連立を組むとはほとんどのイタリア人が思ってはいなかった。
「同盟」とはもともと、怠け者ぞろいの南伊をなぜ働らき者の北伊が養っていかねばならないのか、という不満を基に北伊に生れた政党である。今回の選挙公約も、日本円に直せば、1000万円以下の収入のある者に課される税は一律15パーセント、それ以上の収入のある人は一律20パーセントにする、であったのだ。これ一つ取っても、生産者のための党であることは明らか。
一方の「五ツ星」だが、意訳だと「イタリア国籍を持つ者の当然の権利」という名で、失業者には月々10万円の手当てを保証するとした公約をかかげて失業率の高い南伊から票を集めて勝った政党だ。常識的に考えても、この2党が連立できるわけがなかった。それが組めたのだ。なぜ? この2党のリーダー2人の利害が一致したからである。
「同盟」のリーダーであるサビーニは、いまだに隠然たる影響力をもつベルスコーニを追い落とし、「同盟」もその一員の中道右派全体の主導権をにぎる機会を狙っていた。それが今回の選挙で始めて、ベルスコーニ率いる「イタリアがんばれ(フオルツア・イタリア)」を抜いてサビーニ率いる「同盟」が、中道右派内ではトップに立ったのである。これが45歳に、主導権奪取のチャンスと映る。主導権とは、政権を手中にすること以外の何ものでもない。
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source : 文藝春秋 2018年08月号